2020 Fiscal Year Research-status Report
Pathway-selective chemogenetic manipulation of judgement behaviors
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20K15930
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
網田 英敏 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教 (80845321)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経科学 / 大脳基底核 / 長期学習 / 短期学習 / 霊長類 / ウイルスベクター / 報酬 / 予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳基底核には短期学習によって柔軟に行動を切り替える領域と、長期学習によって定常的に行動を遂行する領域があると考えられている。しかし、これらの領域がどのようにして私たちの行動を適切に制御しているのかについてはまだよくわかっていない。本研究では、大脳基底核の神経路に着目し、予測的に行動を制御する神経路と経験的に行動を制御する神経路メカニズムの解明をすすめる。 本年度は、行動課題制御用システムと神経活動記録用システムのセットアップを完了し、マカクザルに対してチェア上で複数の行動課題を遂行できるよう動物訓練をおこなった。アイトラッキングシステムを導入することで、眼球運動によって動物の学習や意思決定過程を計測することが可能になった。また、電気刺激用のハイパワー刺激アイソレーターを導入し、局所電気刺激法により生理学的に投射関係を同定し、行動への影響を調べることが可能になった。 現在、行動課題遂行中の個体から神経活動記録を実施し、大脳基底核の領域マッピングをおこなっている。とくに、柔軟に行動を切り替えるのに必要と考えられる前部線条体(尾状核、被殻、側坐核)の多様な機能について複数の行動認知課題を用いて調べているところである。そのなかで、これまで知られていた報酬や報酬予期に応答する領域のほかに、報酬に関連する動作を推定・カテゴライズしていると思われる領域を見つけた。今後、これらの領域を操作することにより、各領域がどのような機能を担っているのかについてより詳しく調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、動物のトレーニングを完了し、行動課題遂行中の神経活動記録を開始できているため。 まず、行動課題制御用システムおよび神経活動記録用システムのセットアップをおこなった。行動課題制御用システムとして、MATLABベースのNIMH MonkeyLogicを導入したことにより、視覚刺激として静止画像だけでなく、動画を提示することもできるようになった。神経活動記録用システムとして多点同時記録が可能なシステムを導入し、最大32チャンネルの神経活動記録を行えるようになった。 動物のチェアトレーニングについては、新たなチェアトレーニング方法を導入した。これにより、トレーニング開始から2か月ほどで実験用ブース内で行動課題を遂行できるようになった。 神経活動記録については、頭部中央に記録用チャンバーを取り付けることで、大脳基底核全体から記録できるようにした。これにより、行動課題関連活動をそれぞれの領域間で比較できるようになった。現在、マカクザルの脳領域マッピングを遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、脳領域マッピング終了後にウイルスベクターを注入し、化学遺伝学的手法により神経路選択的な操作を行う予定だったが、「大脳皮質-線条体」経路において、領域ごとに投射関係が異なること、領域ごとに機能差があることを鑑みて、まずは多点同時記録法、電気刺激法、神経薬理学的手法を用いて、線条体内のどの領域がどの皮質領域から投射を受け、どのような行動を制御しているかを正確に同定する必要があると考えた。 そこで、本研究計画の一部を変更し、脳領域マッピング終了後、多点同時記録プローブを導入することで、行動課題遂行中に広範囲の線条体領域から同時に神経活動記録を行い、線条体の領域ごとの機能差を調べる予定である。さらに、局所電気刺激法を用いて、大脳皮質から線条体への投射関係を電気生理学的に明らかにするとともに、薬理学的手法を用いて、領域ごとに課題依存的な行動への影響を調べる予定である。 これにより、本研究課題の最終目標である化学遺伝学的手法による神経路選択的操作に向けて着実に研究計画を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により学会がオンライン開催および中止されたことにより、旅費の支出がなくなった。また、他の科研費が採択されたことにより、今年度に当該研究予算のみで購入する予定であった備品を共用購入したため、次年度使用額が生じた。 次年度は学会のシンポジウムをオーガナイズしているため、学会に参加をする予定であり、その旅費として使用する。また、薬剤およびウイルスベクター注入用システムを購入するために使用する。
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Research Products
(3 results)