2020 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレスセンサーIRE1の活性型ジスルフィドオリゴマー形成機構解明
Project/Area Number |
20K15969
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松崎 元紀 徳島大学, 先端酵素学研究所, 助教 (90817040)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス応答 / ジスルフィド結合 / タンパク質品質管理 / IRE1 / 小胞体 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞小胞体で、立体構造形成に失敗したミスフォールドタンパク質を感知し、その除去を促すシステム、小胞体ストレス応答 (UPR) はその下流のシグナリングを中心に良く研究されてきたが、ミスフォールドタンパク質を感知する際の分子機構は不明であった。そのため、UPRと関連する疾患の成因解明や治療法の確立にも障害となっている。真核細胞で最も保存されたストレスセンサーIRE1はストレスを感知することでオリゴマーを形成すると言われているが、試験管内の実験による特徴付けは十分に為されていない。 サイズ排除クロマトグラフィー (SEC) 法から、会合の濃度依存性を検討したところ、IRE1の活性型ジスルフィドオリゴマーが還元型と比較してより会合しやすいことが分かった。さらに、Clear-Native PAGE (CN-PAGE) 法で分析を進めると、会合状態が一様ではないことが明らかとなった。透過型電子顕微鏡による負染色観察では、還元型と比較して、活性型ジスルフィドオリゴマーが明らかに大きな粒子を形成しており、CN-PAGE法と一致する結果を得た。CN-PAGEを用いたミスフォールドタンパク質依存的な活性型ジスルフィドオリゴマー形成を再現する系でも興味深い結果を得つつある。これらの結果から、IRE1が、自身のタンパク質濃度、ジスルフィド結合、感知の対象であるミスフォールドタンパク質に依存して会合する分子機構の解明が期待される。会合体形成の分子機構が明らかとなれば、小胞体ストレス応答の根幹を成すしくみの理解に繋がり、UPR関連疾患の新たな創薬ターゲットとなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IRE1オリゴマー形成の評価系として、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法に加えて、Clear-Native PAGE(CN-PAGE)法の確立に成功し、分析の効率および分解能が格段に向上した。また、IRE1活性型ジスルフィドオリゴマーの透過型電子顕微鏡による負染色観察に成功した。一方、細胞系においてはストレス薬剤処理やレドックス制御試薬による影響の検討を進めており、ほぼ予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、本研究で必要となる分析系の確立に成功した。そこで、2021年度はこれらの系を用いて、ジスルフィド結合、ミスフォールドタンパク質によるIRE1会合状態への影響をさらに深く追求する。具体的にはミスフォールドタンパク質の量とIRE1会合体の大きさについて定量を進める。また、細胞系ではストレスの量と分子間ジスルフィド結合の量の関係を調べる。また、クライオ電子顕微鏡観察のための条件検討も進める。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大の影響が大きく、2020年度に予定していた学会発表、実験等に関わる出張を中止したため、当該助成金が生じた。2021年度は実験の進捗状況から、必要な消耗品、耐久消費財の増加が予想されるため、それらの物品費として使用する。
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Research Products
(8 results)