2020 Fiscal Year Research-status Report
機械刺激受容によるマクロファージ機能制御とプリン作動性シグナルの役割の検討
Project/Area Number |
20K16010
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
伊藤 政明 高崎健康福祉大学, 薬学部, 講師 (30438759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 機械的刺激 / マクロファージ / プリン作動性シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージは免疫担当細胞として、気管支や肺胞あるいは消化管などに広く分布し、肺の伸展や腸の蠕動運動および浸透圧変化によって機械的な刺激を常に受容していると考えられるが、その影響は明らかにされていない。本研究では、機械的刺激によるマクロファージの機能調節について、プリン作動性シグナルの観点から検討することを目的としている。 機械的刺激は、マクロファージ細胞をシリコンチャンバーに播種し進展刺激装置を用いて負荷した。2系統のマウス由来マクロファージ細胞株ならびにマウス腹腔より採取したマクロファージの機械的進展刺激により、細胞外ATP濃度が一過性に上昇した後に低下するという経時的な変化を認めた。この変化は、進展強度に依存的であったが、進展刺激頻度には大きな影響は受けなかった。また、進展刺激により細胞外ATPに加えADPレベルも増加する可能性をバイオアッセイにより見出した。さらに、機械的進展刺激の負荷は、マクロファージ細胞の炎症性サイトカイン・ケモカインの遺伝子発現レベルを変動させることを確認した。興味深いことに、細胞外ATPの放出を薬物で阻害するあるいはヌクレオチド分解酵素を処理すると、一部の遺伝子の進展刺激による発現変動はキャンセルされたが、細胞外ATP消去の影響を受けずに発現変動が維持される遺伝子も認められた。このことから、進展刺激によるマクロファージ細胞の遺伝子発現変動において、ATP以外の因子による制御あるいはリガンドに依存しない制御の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マクロファージ細胞への機械的進展刺激の負荷により、刺激強度、刺激時間に応じて細胞外ATPやADP濃度の増加が認められた。また、同刺激によるマクロファージ細胞の炎症性サイトカイン・ケモカインの遺伝子発現レベルの変動も認められ、機械的刺激によりマクロファージ機能が変化する可能性が見出された。しかしながら、これらの変動における細胞外ヌクレオチドの関与の有無を明らかにできておらず、貪食活性や活性酸素産生などの機能への影響はまだ評価できていないことから、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージ細胞の進展刺激による炎症性サイトカイン・ケモカインの遺伝子発現の変化が、増加した細胞外ヌクレオチドに由来する応答であるかを検証する。また、遺伝子発現レベルの増加が認められた因子については、実際のタンパクレベルでの変化を検討する。 バイオアッセイ系によるUDPなどの細胞外ヌクレオチドの検出を目指すとともに、物理的な刺激として、進展刺激以外にも低浸透圧刺激などによる細胞外ATP濃度変化や遺伝子発現変化についても併せて検討を進める。特に、機械的刺激のセンサー分子としての可能性が高いP2Y6受容体の役割にも注目して解析を進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、教務的な負担が増え、また物品調達および研究の遂行に対して、少なからず影響がありました。そこで研究の予定(検討の順序)を変更して実施しました。その結果、物品の購入を次年度以降とした部分に差額が生じましたが、検討順序を入れ替えた結果であるため、次年度以降は予定通り執行していきます。 なお、当該未使用額は補助事業を誠実に遂行した結果生じたものであり、令和3年度以降に使用することによって、より研究が進展することが見込まれます。また、交付された補助金は適正に使用します。
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Research Products
(9 results)