2022 Fiscal Year Research-status Report
機械刺激受容によるマクロファージ機能制御とプリン作動性シグナルの役割の検討
Project/Area Number |
20K16010
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
伊藤 政明 高崎健康福祉大学, 薬学部, 講師 (30438759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 機械的進展刺激 / マクロファージ / MCP-1 / P2Y6受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、マウス由来培養マクロファージ細胞(RAW264.7細胞)をシリコンチャンバーに播種して進展装置を用いて機械的刺激を負荷すると、細胞外ATP濃度が一過性にかつ進展強度に依存的に上昇し、IL-1β, IL-6, COX-2 およびmonocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1)といった炎症性サイトカイン・ケモカインの遺伝子発現レベルを増加させた。さらに、ヌクレオチド分解酵素のApyrase処理により細胞外ヌクレオチドを消去しても、MCP-1の遺伝子の発現上昇は維持されることを明らかにしてきた。 本年度は、マクロファージ細胞の進展刺激による炎症性サイトカイン・ケモカインの遺伝子発現の変化が、増加した細胞外ヌクレオチドに由来する応答であるかを検証した。着目したMCP-1の遺伝子発現は、ATPやADP刺激ではほとんど変化せず、UDP刺激で有意に増加した。マクロファージにはUDPをリガンドとするP2Y6受容体が高発現しており、この受容体は心筋ではリガンド非依存性に機械的刺激を受容する可能性が示唆されている。UDP直接刺激あるいは進展刺激によるMCP-1遺伝子発現およびタンパク質産生の上昇は、P2Y6受容体阻害剤の処理あるいはP2Y6受容体遺伝子をノックダウンすることにより有意に抑制された。また、マクロファージに発現している機械的刺激受容体PIEZO1の遺伝子をノックダウンした場合も進展刺激によるMCP-1遺伝子の発現上昇は抑制された。さらに細胞内のシグナル分子の変化について解析したところ、UDP直接刺激あるいは進展刺激によりERK(extracellular signal-regulated kinase)のリン酸化の亢進が認められ、ERK上流のMEKに対する阻害剤の処理によりこれらの刺激によるMCP-1発現上昇は抑制された。以上のことからマクロファージ細胞の進展刺激により、P2Y6受容体が活性化され、細胞内ではERKの活性化を介してMCP-1の発現が亢進する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に関しては概ね計画した通りに進展したが、全体としては前年度までの遅れが影響しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージ細胞の進展刺激による応答にP2Y6受容体が寄与することは明らかにできたが、その活性化がリガンド依存性なのか非依存性なのかはまだ不明である。また、進展刺激による細胞外UDPが上昇するかどうかについての検出が未達であるため継続検討する。
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Causes of Carryover |
本年度分においては、概ね予定通りに研究費が使用できた。しかし、前年度からの繰り越した部分で差額が生じた。当該未使用額は補助事業を誠実に遂行した結果として生じたものであり、令和5年度に使用することによって、より研究が進展することが見込まれる。また、交付された補助金は適正に使用する。
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Research Products
(10 results)