2020 Fiscal Year Research-status Report
高度に成熟した3D心筋組織を用いた HCMモデルの構築と発症機序の解明
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20K16218
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 侑哉 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (70842912)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 心筋 / 肥大型心筋症 / 組織工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトiPS細胞由来心筋細胞の欠点である未熟さを改善するために、当該年度では当研究室より見出されたヒトiPS細胞由来心筋細胞の成熟化を促す低分子化合物(Cpd.A)を用いて3D心筋組織の成熟化法を最適化した。具体的には心臓の発生過程で起こるTNNI1からTNNI3へとアイソフォームの発現が変化することを利用し、それぞれの遺伝子の下流に蛍光タンパク質を組み込んだヒトiPS細胞株(TNNI1-EmGFP/TNNI3-mCherry)を用いて、mCheeryの発現を指標にCpd.Aの添加期間・濃度を最適化した。この最適化された条件でCpd.Aを添加した3D心筋組織を免疫蛍光染色により評価したところ、細胞面積の増大およびサルコメア長の増加が認められた。このことからCpd.Aが3D心筋組織を形態的学的に成熟化していることを明らかにした。また、その3D心筋組織の収縮力がコントロールと比べて増加していたことから機能的な成熟化も促されていることを明らかにした。 さらに成熟化によりHCMの表現系を出すことができるのかを検証するために、HCM患者で見られるサルコメア遺伝子上の変異を導入したHCM変異ヒトiPS細胞を用いて3D心筋組織を構築し、同法により成熟化させたところ、HCMモデルでは野生型と比べて心筋細胞が肥大し、張力が増加していることを明らかにした。これらの変化はHCM患者でも見られる表現系であることから、本手法を用いて作製された3D心筋組織は肥大型心筋症の病態を再現するのに十分な成熟度であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では当初の予定通り、成熟化法の最適化を行い、形態学的・機能的な成熟化を確認した。またHCMモデルでも心筋細胞の肥大を確認したことからHCMの表現系が出ていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね順調に進んでいるため研究計画を継続する。 昨年度に引き続き、最適化した成熟化法により得られた3D心筋組織の電気生理学的な成熟化が促されているかパッチクランプ法により評価する。本年度では更に3D心筋組織からRNAを抽出し、RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析を行うことにより、遺伝子発現レベルでの成熟化を評価し、またヒト成人心筋およびヒト胎児心筋の遺伝子発現と比較することで、どの発生段階の成熟度であるかを検証する。 またHCMモデルに関しても引き続き錯綜配列などの形態学的評価および過収縮といったHCM特有の表現系についても評価する。さらに本年度では野生型およびHCM変異を導入した3D心筋組織からRNAを抽出し、RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析い、パスウエイ解析等を行うことによりHCMの表現系に関与する遺伝子群を抽出する。得られた遺伝子に関して低分子化合物による阻害もしくは遺伝子編集技術を用いてHCMの発症を引き起こすメカニズムを探索する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスによる影響のため、一部本年度中に納品されない試薬があった。当該試薬に関しては次年度始めに購入することにしている。
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