2022 Fiscal Year Annual Research Report
高度に成熟した3D心筋組織を用いた HCMモデルの構築と発症機序の解明
Project/Area Number |
20K16218
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 侑哉 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (70842912)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 肥大型心筋症 / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
肥大型心筋症 (HCM) は500人に一人が罹患するとされる心疾患であるが、発症機序が不明であり、有効な治療薬はない。ヒトiPS細胞由来心筋細胞は試験管内で病態再現を可能にし、これら疾患の病態解明及び創薬への応用が期待がされる一方で、生体環境の差が問題となっていた。そのため、本研究ではiPS細胞由来心筋細胞を用いて、人工立体組織を構築し、その欠点である未熟さを解決することにより、試験管内で高度な肥大型心筋症モデルを構築し、その病態解明を行なった。 iPS細胞由来心筋細胞と線維芽細胞を混ぜることで人工立体組織 (ECT) を構築することに成功した。さらにERR gamma agonist (T112) と伸張培養を組み合わせることで細胞面積の増大やサルコメア長の延長、収縮力の増加、ミトコンドリア機能の亢進といったECTの成熟化を促すことができた。またHCM患者で見られるサルコメア遺伝子上の変異を導入したHCM変異ヒトiPS細胞を用いて3D心筋組織を構築し、同法により成熟化させたところ、成熟化により表現系が顕在化することが示され、細胞の肥大・錯綜配列、繊維化、代謝異常などの臨床的にも知られている表現系を示す肥大型心筋症モデルを構築することに成功した。さらに本モデルを用いて臨床的にmalignantとnonmalignantな変異を有する2種類のHCM変異モデルを作製し、表現系を比較したところ、臨床経過と一致して、変異のmalignancyによって出現する表現系が異なり、より重度な臨床経過を辿る変異においては異常な表現系が多いことが示された。さらに本モデルを用いて、RNA-seqにより病態解明を試みたところ、いくつかのシグナル伝達経路が本モデルにおいて更新していることが示された。
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