2020 Fiscal Year Research-status Report
小鳥の求愛行動における発声と身体運動を協調するコミュニケーション神経機構
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20K16472
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
森 千紘 帝京大学, 薬学部, 研究員 (00772253)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 発声学習 / 求愛行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は複数の感覚信号を用いるコミュニケーション行動がいかに協調されて出力されているのかその神経基盤を明らかにすることを目指す。このために、音声コミュニケーションに特化した脳領域をもつ鳴禽類であるブンチョウを用い、求愛行動における歌とダンスがどのように協調されているのか、そのしくみを解明する。ブンチョウのオスは、個体の発達初期に歌とホッピング(枝で跳ねることを繰り返す)を別々に行う。そして、歌の学習とともに、徐々に歌とホッピングを組み合わせるようになる。成鳥になると、求愛ダンスの行動要素としてホッピングとくちばしぬぐい(枝にくちばしをこすりつける)を歌に組み合わせて行う。「発声学習・制御に関与する脳領域が歌と身体運動の協調に関与し、コミュニケーション行動を調節する」との仮説をたてた。まず、求愛歌と求愛ダンスの協調を担う脳領域を同定するため、薬理学的神経活動抑制による求愛行動への影響を調べた。歌の時系列構造を制御する運動前野(HVC)が関わる可能性を検証するため、薬物投与用カニューレを埋め込み、ムッシモール注入によりHVCの神経活動を一過的に不活化した。さらにイボテン酸注入による恒久的な不活性化の実験も行った。これらの薬理学的操作による影響を調べるために、行動の記録と解析を進めた。また、神経活動依存的に発現誘導される最初期遺伝子を神経活動マーカーとして利用し、求愛ダンスにおいて活動する脳領域を同定する実験を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歌の時系列構造を制御する運動前野(HVC)の不活性化が歌とダンスの協調にどのように関わるか、を調べるための行動データ収集がほぼ完了したため、今後は、解析を進めていく。これまでに構築してきた求愛行動の自動追跡と定量化のための実験・解析系についてと、歌・ダンスへのHVCの関わりについて、合わせてまとめ、論文として発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
薬理操作の行動データ解析に加え、神経活動依存的に発現誘導される最初期遺伝子を神経活動マーカーとして利用し、求愛ダンスにおいて活動する脳領域を探索する実験を引き続き進める。これにより、求愛ダンス制御に関わる脳領域の候補をしぼる。さらに、自由行動下における神経活動記録実験系を整備し、候補領域を含め、運動前野、大脳基底核において、求愛ダンスと関連する神経活動パターン(神経活動の増加、発火タイミングなど)の有無が起こるかを調べる予定である。
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Causes of Carryover |
薬理操作実験を進め、求愛行動記録・解析の方法論とまとめて成果発表出来るように進めることを優先したため、電気生理学的実験に使用するヘッドステージ、電極等の購入を行わなかった。次年度からこれらの実験を進めるため、購入を予定している。
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