2021 Fiscal Year Annual Research Report
前頭側頭型認知症の患者剖検脳を用いた海馬シナプス障害の解析
Project/Area Number |
20K16586
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
陸 雄一 愛知医科大学, 付置研究所, 助教 (50748382)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前頭側頭型認知症 / TDP-43 / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
前頭側頭型認知症FTLD-TDP、FTLD-tau患者の海馬顆粒細胞では、神経細胞死(細胞脱落や脳萎縮)が起こる前の段階で、シナプスの障害が起き、神経のネットワークが機能不全に陥っていることを仮定し、実験を進めた。前頭側頭型認知症と臨床的に診断され、疾患関連遺伝子のスクリーニングがされ、病理学的に確定診断された連続剖検脳を用いた。対象症例はFTLD-TDPまたはFTLD-tauと確定診断された患者の剖検脳で、合計62症例とコントロール10例(患者群と年齢層一致、神経疾患なし)の脳組織を確保し、実験を行った。2021年度は凝集タンパクの種類で軸索終末の変化が違うかどうかを主に解析した。 まず、海馬顆粒細胞の軸索終末の脱落は、FTLD-TDP、FTLD-tauの両者で高度に観察された。特に、FTLD-TDPの12%、FTLD-4-repeat-tauの14%、FTLD-3-repeat-tauの60%の症例で、海馬顆粒細胞の軸索終末のほぼすべてが消失していた。背景遺伝子間では、軸索終末脱落の重症度に有意差はなかった。抗VGLUT-1免疫組織化学と抗dynorphin免疫組織化学との比較検討では、FTLD-TDPとFTLD-tau とで、顆粒細胞の軸索終末脱落と軸索脱落とのパターンに明確な相違が見られた。すなわち、FTLD-TDPではFTLD-tauと比べてより早期に軸索終末の脱落が始まっていることが示唆された。ここまでの成果は一部を論文総説で紹介し、定量データも加えたフルデータの原著論文は作成中である。なお、実験過程で海馬、前頭葉、運動ニューロン障害にスプライシング因子の核内発現が関連する可能性、顆粒細胞障害が多系統萎縮症などのより広範な神経変性疾患に見られることも見出され、それぞれ当該研究資金の貢献を文中に明記の上、論文発表した (添付の一覧を参照)。
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Research Products
(4 results)