2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K16932
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
浜中 耕平 横浜市立大学, 医学部, 助教 (20801129)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クリッペルフェイル症候群 / 染色体転座 / トポロジカルドメイン / スーパーエンハンサー / エンハンサーハイジャッキング |
Outline of Annual Research Achievements |
t(5;8)(q35.1;p21.1)染色体転座を原因とする、クリッペルフェイル症候群(椎骨の癒合)と小頭症を伴う疾患のメカニズムの解明を試みた。この一見異なる二つの異常は、骨芽細胞の骨化の異常としてまとめて説明できるため、この観点から本染色体転座を解析した。まず、全ゲノム解析により、本転座の断端を1塩基レベルで決定した。次に、この両断端が破壊する2つのトポロジカルドメインに含まれる遺伝子群の内、骨芽細胞の機能と関連するものを文献から検索した。結果、FGF18のみが骨芽細胞による椎骨と頭蓋の骨化を促進することが知られていた。また、この二つのトポロジカルドメイン内に、骨芽細胞でエンハンサーが密集した領域を同定した。次に、転写開始点の周辺200キロ塩基対ほどのDNA配列から遺伝子の転写量を予測する既存の深層学習モデルを利用して、あるエンハンサーが特定の遺伝子の発現量に与える影響を予測するツールを開発し、in-silico “luciferase” assayと名付けた。このツールを用いて、上記のエンハンサー群が約500キロ塩基対ほど離れたFGF18の発現量を骨芽細胞で増加させることが予測された。これらの結果から、染色体転座がエンハンサーハイジャッキングを介してFGF18の発現を上昇させ、骨芽細胞による骨化が亢進することで、クリッペルフェイル症候群や小頭症を起こしている可能性が示唆された。本研究の結果から、疾患のメカニズムに基づいた細分化と精密医療が将来的に進むと思われる。また、本研究で開発したin-silico “luciferase” assayは、現実にin vitroで行うluciferase assayと比べて、1)多様な細胞種で活性が調べられる、2)注目している遺伝子のプロモーター配列が使える、などのメリットを有し、今後国内外の幅広い研究で活用されると思われる。
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