2022 Fiscal Year Annual Research Report
急性腎障害におけるDNA修復因子を介したアニオントランスポーター制御機構の解明
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20K17291
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菱川 彰人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50867489)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 急性腎障害(AKI) / DNA損傷 / プレコンディショニング効果 / エピゲノム / 尿細管糸球体フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、連続した2回目の急性腎障害(AKI)は1回目より腎障害が軽減されるというプレコンディショニング(PC)効果が報告されているが、DNA損傷修復との関連は明らかではない。本研究ではAKIおよびPC効果とDNA損傷修復との関連について、尿細管細胞におけるDNA修復因子KAT5を中心に解析を行なった。 マウス両側腎虚血再灌流(IR)モデルを用いてAKIを惹起し、プレコンディショニング(PC)として1週間前にIRを施行した場合、PC(+)群でPC(-)群に比して腎皮質のKAT5発現が増加しDNA二本鎖切断(DSB)の増加が抑制されるとともに、近位尿細管ClチャネルKCC3のIRによる発現低下が減弱した。近位尿細管特異的KAT5ノックアウト(KO)マウスでは、DSBが増加するとともに、KCC3発現が低下しPC効果が減弱した。質量分析イメージングを用いてアデノシン分布変動を検討した結果、KAT5を介した尿細管糸球体フィードバック減弱がPC効果に関与することが示唆された。 そして、ヒト腎生検検体では、AKI症例でDSBマーカーγH2AXが亢進しKCC3発現が低下するとともに、eGFRがKCC3発現と正の相関・γH2AXとKCC3発現が負の相関を認めた。 さらに、Antimycin A投与によりヒト培養尿細管細胞(HK2細胞)に障害を惹起した結果、2回目の投与では1回目に比してKAT5、KCC3が増加、KCC3プロモーター領域のクロマチンアクセシビリティ上昇、ChIP解析で同部位のKAT5結合が増加した。 以上より、 KAT5はAKIに伴うDNA修復に加え、KCC3発現のエピゲノム調節を介した糸球体濾過量調節に関与している可能性が示唆された。 今後KAT5あるいはアニオントランスポーターをターゲットとしたAKIの予防や治療法・CKD進展の予防法が確立されればその臨床的意義は非常に大きいと考える。
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