2020 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性心筋症-大動物モデルに対するHMGB1の心筋再生効果の検証
Project/Area Number |
20K17714
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
後藤 隆純 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (40793295)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨髄由来間葉系細胞 / HMGB1 / 心筋梗塞 / 大動物実験 / 心筋バイアビリティー / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄由来間葉系幹細胞を障害組織へ誘導し組織再生を促進させる因子であるHMGB1が組織リモデリングを抑制する薬剤候補として注目されている。これまで当科では、心筋梗塞モデルラットに対し、HMGB1による心機能改善効果を検証し、梗塞後リモデリング抑制に関する有効性、及び、障害心筋に骨髄由来間葉系幹細胞の誘導が促進される機序を解明した。HMGB1製剤は、心筋梗塞後心不全に対する既知の細胞治療の再生効果をさらに強調する事が期待され、早期ヒト臨床応用に向けて、大動物(ブタ)心筋梗塞モデルを用いた前臨床試験を、2020年度に実施した。 本年度は8頭のブタ心筋梗塞モデルを作成し、4頭ずつHMGB1製剤投与群、Control(生食投与)群に分け、治療効果を検証した。治療効果の検証は、心エコー、心臓MRI、アンモニアPET-CT、心臓カテーテルにより行った。 心エコーでは、心機能がControl群では経時的に増悪しているのに対し、HMGB1製剤投与群においては改善を認めた。心臓MRIでは、治療前後でガドリニウム造影剤を用いて撮影を行い、infarct zone(梗塞領域)、border zone(境界領域)、remote zone(正常領域)の占める割合を算出した。治療前後を比較すると、Control群ではinfarct zoneが拡大していたのに対し、HMGB1製剤投与群ではremote zoneが拡大しており、HMGB1製剤投与によってborder zoneの心筋壊死進行を抑制できる可能性が示唆された。アンモニアPET-CT、心臓カテーテルでは、心筋血流量、冠血流予備能、末梢循環抵抗等を定量的に評価可能であり、HMGB1製剤投与群における改善を期待し現在解析中である。 今後病理組織標本を用いて、間葉系幹細胞の誘導、心筋線維化の抑制、血管新生の促進等の機序を解明する予定としている。
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