2020 Fiscal Year Research-status Report
膠芽腫に対するiPS細胞由来NKT細胞を用いた新規複合免疫療法の開発
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20K17917
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 正芳 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (10867857)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | iPS-NKT / NKT細胞 / 膠芽腫 / 神経膠腫 / 抑制性免疫 / 養子免疫療法 / 複合免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、膠芽腫に対しNKT細胞を中心とした新規免疫治療法を確立するため、神経膠腫患者の末梢血及び腫瘍局所における免疫環境の解析として、千葉大学脳神経外科で神経膠腫と診断された患者と、コントロール群として脳血管障害患者を対象に同意を得て血液を採取し、フローサイトメトリーでリンパ球サブセットを解析している。 これまで75症例の検体解析が終了しており、神経膠腫患者の末梢血ではコントロール群と比較して、末梢血中の末梢血単核球(PBMC)が減少しているにもかかわらず、代表的な免疫抑制性細胞集団である制御性T細胞(Treg)のうち、免疫抑制機能が強いエフェクターTregが多い傾向にあり、ナイーブTregは少ない可能性が示唆されている。 もう一つの代表的な免疫抑制性細胞集団である骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)は、単核球MDSCと顆粒球系MDSCに別れるが、神経膠腫患者の末梢血では特に単球系 MDSCが増加傾向にあることも分かってきた。 また、神経膠腫患者の検体から比重分離法で腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を分離して、解析を行っている。その結果、低悪性度の神経膠腫において、CD8+ T細胞の割合が高い傾向を認めた。さらに、CD8+ T細胞のPD-1発現率を、TIL中のCD8+ T細胞とPBMC中のCD8+ T細胞で比較すると、TIL中のCD8+ 細胞において有意に高いPD-1発現を認めており、免疫抑制状態にある可能性が示唆された。活性化や疲弊状態との関連についても検討する予定である。 次に動物実験モデルとして、ヒト神経膠腫細胞株を重傷免疫不全マウスの頭蓋内に植え込み、ヒト神経膠腫モデルを作成して、腫瘍の成長を頭部CTで観察してき た。今後はこのデータを元に人神経膠腫モデルを用いてNKT細胞を用いた治療実験を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
千葉大学脳神経外科で神経膠腫と診断された患者とコントロール群として脳血管障害患者の検体を対象に解析を進めており、新型コロナウイルス禍における神経膠腫患者の手術や脳血管障害患者の検査入院などの制限もあるが、本研究に関しては概ね順調に進展している。 また、その他の予定している実験等に関しても、予備実験が終了し本研究全体としては概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト膠芽腫マウスモデルに対して、ヒト末梢血から培養して作成したNKT細胞を直接頭蓋内に投与する免疫治療実験を行こない、頭蓋内腫瘍に対するNKT細胞の治療効果を確認する。NKT細胞は末梢血中においては非常に少ないため、臨床では治療に 必要な細胞数まで増殖させることは困難なことが予想されることから、iPS細胞由来NKT細胞を用いた治療実験を行う。更に、NKT細胞投与を静脈内投与群、腹腔内投与群、 脳室内(髄腔内)投与群に分けて、投与細胞濃度、投与間隔を調整し、最適なNKT細胞導入方法を検討する。 現在、膠芽腫に対するNKT細胞を中心とした末梢血及び腫瘍局所における免疫環境の解析を行っている。これ迄の解析結果から、以下の2点に関して免疫抑制機構に対する複合的治療実験を行う。①PD-1は細胞傷害性T細胞の細胞 膜表面にある免疫チェックポイント受容体であり腫瘍抗原に繰り返し曝露されることで発現が高まり、T細胞が疲弊状態に陥る。これに対し、PD-1阻害薬であるニボルマブを投与する。②MDSCは腫瘍局所でTregなど免疫抑制細胞を誘導することに加え、MDSC自体もT細胞に対する免疫抑制機能を備えていることが知られている。MDSCを正常な骨髄由来細胞に分化させることが知られているオールトランスレチノイン酸(ATRA)を投与して、末梢血中のMDSCを排除する。 研究計画の段階では、神経膠腫患者の免疫抑制状態の原因の可能性があるSP1(スフィンゴシン1リン酸)濃度を神経膠腫患者の血清から測定する予定であったが、近年血清中のSP1濃度は血管障害の影響を過度に受けることが報告されており、交絡因子により測定結果に非常に大きな影響が出る事が考えられた。そのため、直接SP1濃度を測定するのではなく、SP1の合成酵素であるスフィンゴシンキナーゼなどの解析を検討している。
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Causes of Carryover |
神経膠腫患者の免疫抑制状態の原因の可能性があるSP1(スフィンゴシン1リン酸)濃度を神経膠腫患者の血清から測定する予定であったが、近年血清中のSP1濃度は血管障害の影響を過度に受けることが報告されており、交絡因子により測定結果に非常に大きな影響が出る事が考えられたため、血清中のSP1を測定していない。そのため、SP1の合成酵素であるスフィンゴシンキナーゼなどの解析を検討している。 本研究で得られた知見や結果を積極的に学会等で発表していく予定であったが、コロナ禍による外出移動制限により学会等での発表を行っていないため、旅費を使用していない。
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