2020 Fiscal Year Research-status Report
多血小板血漿を用いた放射線性口腔粘膜炎治療薬の確立
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20K18676
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
宮本 大模 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (10571680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線性口腔粘膜炎 / 非吸収性液状機器 / 口腔細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は放射線性ラット舌モデルを用いて、非吸収性液状機器が放射線性口腔粘膜炎に与える有効性について検討した。これまで非吸収性液状機器は物理的保護作用のみを有すると考えられていたが、口腔粘膜炎部の細菌数を測定したところ、非吸収性液状機器塗布群は非塗布群と比較し有意に細菌数の減少を認めた。 通常、口腔内に放射線が照射されると口腔内細菌は一時的に減少し、その後増加してくる。照射により口腔粘膜に潰瘍が生じ上皮が欠落することで細菌による二次感染が生じ口腔粘膜炎は重症化するため、欠落した上皮部を非吸収性液状機器で保護することで細菌の侵入を防ぎ口腔粘膜炎の重症化を抑制することができると考えられる。 また照射直後から非吸収性液状機器を塗布した群では、非塗布群と比較して口腔内細菌の増加速度が遅いことが分かった。非吸収性液状機器は、塗布後口腔粘膜上に存在する水分を吸収し5分程度で接着性の保護膜を形成する。そのため口腔内細菌は口腔粘膜を足場にして増殖することが叶わず、非吸収性液状機器を塗布することで、口腔内細菌の増加が抑制されたと考えられる。 口腔粘膜炎に対する非吸収性液状機器の口腔細菌数抑制効果については、今後第66回口腔外科学会総会や第19回口腔ケア学会での報告を予定していく。現在は、非吸収性液状機器が有する口腔粘膜炎に対する有効性について、これまで分かっている物理的保護作用や口腔細菌抑制効果に加えて、抗炎症効果の有無について確認するため組織内のサイトカインの定量を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね予定通りに進行している。ただし非吸収性液状機器は物理的保護作用の他に口腔細菌による二次感染の抑制など、当初は想定していなかった有効性を有する可能性を認めたため、来年度においてさらなる検証が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、非吸収性液状機器が有する口腔粘膜炎に対する有効性を多角的に再検討する。まずは放射線性口腔粘膜炎部におけるサイトカインの定量を行い、非吸収性液状機器が有する抗炎症効果の有無についてさらなる検討を行う予定。再検討を行った上で非吸収性液状機器の有効性を上回ると予想されるPRP(Platelet Rich Plasma)を用いて口腔粘膜炎に対する新たな治療薬を確立していく。 基礎研究の結果が得られ次第、特定認定再生医療等委員会や名古屋市立臨床試験審査委員会の承認を受けた上で、臨床応用を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナウイルス感染の影響で移動が制限され、学会での発表や参加ができなかったため旅費の支出がなかったことから、次年度繰越金が生じた。繰越金に関しては次年度において旅費やその他雑費に使用する予定。
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