2021 Fiscal Year Research-status Report
原発開放隅角緑内障患者の主観的・客観的視覚を基盤とした治療支援プログラムの開発
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20K19093
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 和枝 九州大学, 医学研究院, 講師 (90389502)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 緑内障 / 視線計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、POAG患者に対する視線計測に先立ち、以下のように研究を実施した。 ①POAGの好発年齢層に該当する40歳代以上の健常者3名に対し、視線計測を試行した。方法は、グラスタイプのアイトラッキングシステムを装着し、廊下歩行や階段昇降、PC操作、読み書き等の動作における視線動向のデータを収集した。その結果、視野映像および視線軌跡、注視位置や注視時間、瞬目回数、眼球速度に関するデータが得られたが、前述の日常生活行動における自由な視線の動きは、個人の行動特性や関心に強く影響を受け、健常者の共通の特徴を見出すことは困難であることがわかった。このことから、まず、変動要因が小さい画面上での視線計測を行うよう計画を修正した。 ②PC画面を見ることで視線計測を行うシステムを作成した。Microsoft officeのPowerPointを使用し、画面の中央の目印をスタート点とし、周辺部分に指標がランダムに点滅した際に追視してもらうプログラムにした。指標の位置は、中心視野・周辺視野を反映するよう視野角を考慮し配置した。また、画面の背景および指標の色は、緑内障により障害を受ける可能性があるとされる網膜細胞の機能を根拠として、複数作成した。 ③40歳代以上の健常者3名に、②で作成したシステムを使い、グラスタイプのアイトラッキングシステムを装着し両眼視による視線計測を試行した。その結果、画面と被験者の距離や高さ、頭部の動きにより視線が画面を外れる等の誤差が生じることがわかり、検査方法の改善や条件の統制に課題が残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、POAG患者へのインタビューや視線計測を予定していたが、感染症の拡大により、医療機関での受け入れが難航した。しかし、これまでの文献検討や過去のPOAG患者へのインタビュー調査から、点眼治療中止の理由や疾患の自覚症状に関する情報はある程度整理できたため、視線計測に注力することとした。 視線計測は、まず40歳以上の健常者を対象に試行したが、日常生活行動における測定の誤差が明らかとなり、患者への調査は延期した。そして、新たにPC画面上のプログラムを見ることで視線計測を行うシステムの作成し、試行することに計画を変更した。また、本プログラムの内容や、検査方法の改善、測定条件の統制などに課題が残っており、安定したデータが得られる状態ではないため、健常者に対する試行を続けている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
①PC画面上での視線計測システムの改善 主な改善点:画面を映すスクリーンの大きさと、研究対象者の目線の高さやスクリーンとの距離を、視野を安定して反映できるように測定方法を調整する。プログラムは、背景や指標の色、指標の大きさ、点滅時間等を調整し、安定してデータが得られるよう改善する。 ②40歳以上の健常者に対して、①のシステムを使用した視線計測 方法:40歳から60歳代の健常者15名(各年齢層5名程度)を対象に、グラスタイプ両眼視のアイトラッキングシステムを装着し、①の画面を見ながら視線計測を実施。視野映像および視線軌跡、注視位置や注視時間、瞬目回数、眼球速度のデータを収集し、視線解析ソフトで分析する。また、POAG患者への適用をする際に、安全かつ安定してデータ収集が可能か否か十分検討する ③POAG患者への①のシステムを使用した視線計測 対象:POAGで眼科外来通院治療を行っている患者15名程度。自身の判断で研究に参加できる患者を、研究協力者である眼科医から紹介してもらう。研究参加およびカルテ閲覧について同意を得て行う。方法:グラスタイプ両眼視のアイトラッキングシステムを装着し、①の画面を見ながら視線計測を実施。視野映像および視線軌跡、注視位置や注視時間、瞬目回数、眼球速度のデータを収集し、視線解析ソフトで分析する。 ④PC画面上の視線計測システムの結果が、日常生活行動におけるPOAG患者の視線動向や自覚症状の手がかりとなりうるのか否かを検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究対象者として予定していた患者に調査ができず、学内職員の協力を得て試行を行ったため、人件費及び旅費を使用しなかった。次年度は、研究対象者に対する謝金などの人件費に充当予定である。
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