2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢透析患者における運動療法の有効性の検証:多施設共同無作為化比較対照試験
Project/Area Number |
20K19332
|
Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
松沢 良太 兵庫医療大学, リハビリテーション学部, 講師 (20770184)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | フレイル / サルコペニア / 腎不全 / 透析 / リハビリテーション / 身体機能 / 運動療法 / 腎代替療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦において、血液透析療法を受ける末期腎不全患者の人口は年々増加し続けており、透析患者の高齢化が進行している。大規模な疫学調査によれば、透析患者の6割以上が日常生活に何らかの介助を必要としていることが報告され、我々は透析患者における日常生活動作能力の低下が死亡リスク上昇に関連することを明らかにした(Matsuzawa R et al. J Ren Nutr. 2019)。この日常生活動作能力には身体機能が強く関わっており、高齢透析患者の身体機能改善を目的とした運動療法介入の科学的根拠を構築することは、今日の腎不全医療において急務といえる。 一般に高齢者にみられる低い自己効力感、不快症状の自覚、転倒恐怖感、運動習慣の欠如、心理環境的要因などは運動療法の障壁となる。そのため、若年あるいは中年の透析患者に対する運動療法の科学的根拠をそのまま高齢患者に当てはめることはできない。そこで、我々は、“高齢”透析患者に対する運動療法は効果的な治療手段になり得るかについて検証することにした。 2020年度は研究参加施設の準備、前データの収集・解析を中心に実施した。調査の結果、約70%の患者にサルコペニアを、大部分の患者にquality of lifeの低下を認めた。2020年度の成果については、国内学会および英語論文の執筆(Matsuzawa R et al. Clin Nutr. 2021; Matsuzawa R et al. J Ren Nutr. 2020)を通じて、発表・報告した。また、末期腎不全患者を対象に運動療法介入を実施したこれまでの医学論文を系統的にレビューする活動も並行して実施しており、そのプロトコール論文を発表した(Matsuzawa R et al. Renal Replacement Therapy. 2020)。現在、その解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
透析施設での身体機能等の前データの測定、先行研究の系統レビューを通じた情報収集は順調に進んでいる。また、すでに取得済みのデータに関しては、学会発表にとどまらず、査読付きの英語医学雑誌への論文アクセプトが達成できている。ただ、効果を見込むことができ、かつ高齢患者にも適応可能な介入手段の検討を行っている最中であり、実際の介入には至っていない。以上が、上記区分となる理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに蓄積したデータを用いて、本研究課題の達成に向けた解析および発表を行う。今後は具体的な運動療法介入の方法を確立すること、倫理審査および割付方法について検討を進めていく。
|
Causes of Carryover |
今年度分に割り当てた研究費の多くを次年度以降に繰り越すことになる。その理由として、新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、①学術集会が中止・延期になったこと、②海外学会への参加が制限されたこと、から出張費として当初見込まれた金額に達しなかったためと考えている。加えて、運動療法介入の方法を確立している最中であり、運動療法介入に必要となる機器等の購入ができていないこともその理由であると考えている。次年度以降、学会開催が正常化し、海外渡航が許可されるようになれば、次年度以降に繰り越す予定の研究費を充てるつもりである。また、実際に運動療法介入を実施するようになれば、その際必要となる運動機器等の購入に充てる予定である。
|
Research Products
(24 results)