2021 Fiscal Year Research-status Report
音信号教示によるシナジーの変容の分析とそのトレーニングへの応用
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20K19488
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
松本 賢太 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (50843364)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 運動教示 / シナジー / 音信号 / FPGA / リズム運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、運動制御に関わる「シナジー」という神経生理学の知見とトレーニング理論とを結びつけ、巧みなシナジーを獲得する方法を明らかにすることである。そのために、「①音信号による教示訓練を実施したときにシナジーがどのように変化するのかを明らかにし、運動教示とシナジーの関係性を実験的に示す.②熟練者のリズムを教示することで、シナジーにどのような変容を及ぼすかを明らかにし、効果的な運動学習法を提案する.」という流れで研究を進める。本年度は、①および②の内容を実施した。具体的には「Ⅰ 音信号による教示訓練の実験」,「Ⅱ 熟練者の動作計測実験」を実施した。以下、その詳細を説明する。 Ⅰ 音信号による教示訓練の実験 前年度に開発した実験装置を用いて、音信号の教示訓練によるシナジーの変容を調査した。特に、シナジー仮説では、Central pattern generator(CPG)と呼ばれる、リズム生成器を仮定していることから、本年度はシナジー仮説の中核にあるこの「リズム」に着目し、その変容を調査した。具体的には、1Hz~5Hzのパルス音を被検対象者に教示し、その音に合わせてリズム運動(足踏み運動やダンスの動作)をし、この訓練を、週2回1か月間継続して行った。その結果、運動教示とリズム感の関係性を実験的に示し、かつリズム感の変容を評価する「乖離度」という指標を得た。これらの成果は、2件の国内発表として報告した。 Ⅱ 熟練者の動作計測実験 サッカーのシュート動作に着目し、熟練者の動作を計測した。実験時、ボールと足部が接触する時刻において、つま先のマーカがボールに隠れ、計測精度が低下する問題があった。そこで、マーカ配置をつま先から小指の付け根に変更すると共に、カメラ配置を試行錯誤し、本実験で使用する8台の赤外線カメラによって安定してシュート動作を計測可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、実験開始に遅れが生じたため、進捗はやや遅れている。なお、本年度においては、「Ⅰ 音信号による教示訓練の実験」、「Ⅱ 熟練者の動作計測実験」を実施し、各進捗は各々以下となる。 「Ⅰ 音信号による教示訓練の実験」:完了 前年度に開発した実験装置を用いて、音信号の教示訓練によるシナジーの変容を調査した。具体底に、リズム感の変容に着目し、その変容を調査した。その結果、運動教示とリズム感の関係性を実験的に示し、かつリズム感の変容を評価する「乖離度」という指標を得た。これらの成果は、2件の国内発表として報告し、さらに1件の国内発表を予定している。 「Ⅱ 熟練者の動作計測実験」:継続中 サッカーのシュート動作に着目し、この動作を安定的に計測可能なマーカ配置およびカメラ配置を決定した。そして、熟練者の3次元位置座標データをモーションキャプチャシステムにより取得した。現状は2名のデータを取得しており、今後は追加で3名のデータを取得する予定である。加えて、野球のピッチング動作の計測をし、その後、シュート動作およびピッチング動作の教示訓練を実施する。 以上より、「Ⅱ 熟練者の動作計測実験」が継続中であることから、進捗は遅れているものの、実験遂行が見込めることから、進捗状況は「やや遅れている」とする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、熟練者の動作計測実験および非熟練者への教示実験を推進する。それらの詳細を以下説明する。 「熟練者の動作計測実験」 野球のピッチングおよびサッカーシュート動作、それぞれの熟練者の動きを計測する。前年度までにサッカーのシュート動作の計測方法を確立し、2名の被験者の動作を計測した。今後は、追加被験者3名を募集し、必要数のデータを確保する。また、野球のピッチング動作の計測に関して、手指の動作も計測するために、マーカ・カメラ配置を検討する。その後、5名の熟練者の動作を計測していく。 「非熟練者の動作計測実験」 研究代表者らが考案した特異値分解によるシナジー抽出手法を用いて、各動作からシナジーを抽出する。そして、抽出したシナジーから特徴的な複数の動作のリズムを教示する。具体的には、熟練者のリズムを再現する音源を生成し、前年度までに開発した音信号生成装置を用いて、その教示および有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、実験開始に遅れが生じたため、必要数のデータが得られていない。そのため、必要数のデータを確保するための被験者への謝金および、実験時の消耗品の購入、得られた成果の報告のために助成金を使用予定である。
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