2020 Fiscal Year Research-status Report
Functional significance of successive failures in motor learning processes
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20K19593
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武見 充晃 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任研究員 (90828302)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 身体運動 / 強化学習 / 報酬予測 / 探索 / ばらつき |
Outline of Annual Research Achievements |
優れた運動技能を身につけるためには様々な身体動作パターンを試行錯誤する必要があり、とりわけ運動のパフォーマンスに優れないときは、動作のばらつきを増やして最適な動きを探索することが示されている。しかしながら動作のばらつきが大きくなると、当然ながら運動課題に失敗する可能性も高くなり得る。すなわち運動に失敗するほど、動作のばらつきが増えることでより連続で失敗しやすくなることが考えられる。それでもなお、連続失敗は単純に回避すべき事象なのか。最適な動きを試行錯誤した帰結として連続失敗が生じているならば、連続失敗を経験せずに習得した技能は本当に優れているのだろうか。 本研究の達成目標は次の2点である。①調子の波とも呼ばれる運動の連続失敗が、運動学習の結果に与える正の影響を明らかにすること。②連続失敗の発生を操作できる神経刺激法を確立し、運動学習を促進できる新しい技術手法を開発すること。 2020年度は、前者の目標を達成すべく研究に取り組み、そのほぼ全てを達成することができた。健常成人33名を対象に運動学習実験を行い、運動の成功と失敗が連続して生じることを示した。そのメカニズムは、強化学習における探索と利用によって説明できることを数理モデルを用いて明らかにした。また同様の連続した失敗の発生は、実験課題を変えれば抑制されることを、健常成人11名を対象とした追加実験で示した。すなわち、連続失敗の発生を操作できる環境因子が存在することを示した。上記の内容は2021年4月開催の国際学会にて口頭発表予定である(採択率32%)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度の目標「調子の波とも呼ばれる運動の連続失敗が、運動学習の結果に与える正の影響を明らかにすること」は、連続失敗の発生を実験課題で確認し、その発生メカニズムを数理モデルで解明することができた。運動学習の結果に与える正の影響は見つからなかった。計画していた検討事項の全てを明らかにすることができた。加えて2021年度の目標である「連続失敗の発生を操作できる神経刺激法を確立し、運動学習を促進できる新しい技術手法を開発すること」についても、神経刺激ではなく環境因子の操作によって連続失敗の発生を抑制できることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は研究最終年度であるため、これまでの結果を原著論文として査読付国際誌に投稿することを目指す。必要に応じて追加実験を優先的に進める。社会的に抵抗感の強い神経刺激を用いずとも、環境因子の操作で連続失敗を抑制できるという結果は、実用性を鑑みると極めて有望である。よって、神経刺激に限らず、幅広く連続失敗を効果的に抑制できる技術手法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症で学会等が開催されず、旅費の計上が0円となったことが次年度使用額が生じた主たる理由である。一方で感染症対策のため、実験関連の消耗品の支出は当初計画より増加傾向にある。次年度使用額は、主にこの消耗品購入に充てる。
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