2020 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism elucidation of bystander effects focusing on DNA repair in radioresistant chondrosarcoma cells
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20K19967
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
池田 裕子 近畿大学, 理工学部, 助教 (90806465)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線誘発バイスタンダー効果 / 放射線抵抗性 / DNA損傷・修復 / 染色体分裂異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、放射線抵抗性を示す細胞株のDNA損傷・修復応答に着目し、バイスタンダー効果 (RIBE)の原因経路と関与する細胞間情報伝達物質を同定することを目的としている。そこで、放射線抵抗性の軟骨肉腫細胞株HTB94をはじめ、異なる特性の細胞株を用いて、放射線の性質の違いによるRIBEの誘導の有無とその応答メカニズムについて、3つの実験ステップにより解明を目指す。 令和2年度は、(i)RIBE 誘導と、細胞周期依存性の把握から開始した。これまでに実施してきたHTB94の解析に加え、複数の細胞株を新たに用いて同様に検証を進めた。まず、放射線種はX線を使用し、コロニーアッセイや微小核試験、その他の細胞機能(細胞運動能,遊走能)に関する解析を通して、直接照射効果で誘導される細胞応答を把握した。その中から、ヒト骨肉腫細胞株MG63に着目し、同じ培地を共有しながら、照射細胞と非照射細胞を「非接触共培養」し、RIBE誘導を検証した。これまでに、照射された細胞における細胞周期依存的な放射線感受性(殺細胞効果)の知見が、非照射細胞の細胞応答でも同様に生じ、RIBE の誘導に関与するか否かについて明らかにされていない。そこで、形成された53BP1やgH2AX(DNA損傷マーカー)のフォーカスと各細胞周期マーカーを同時に多重染色するための条件検討を行った上で、(ⅱ) RIBEの原因経路の特定や(ⅲ) 細胞間シグナル伝達物質の同定に向けて、線量・経時変化に着目した解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は提案した計画のうち、X線を用いた実験に注力し、放射線の直接効果およびRIBE によるDNA 損傷・修復能や細胞機能の変化を調べた。前年度まで所属した研究グループで、正常線維芽細胞株AG01522とHTB94 に対して、X 線をはじめ、様々な線種の放射線を照射した後にRIBE 誘導の有無(微小核試験, 53BP1フォーカス形成)の検証が行われており、放射線抵抗性を示すHTB94 ではRIBE が誘導されないことが報告されている 。 そこで、令和2年度はそれら以外の複数種の細胞株においてもRIBEの有無を把握した上で、RIBE の原因経路の特定や細胞間シグナル伝達物質の同定に向けた諸条件の検討を行った。RIBE 誘導により非照射細胞では、照射細胞のDNA 損傷形成や修復過程とは異なるパスウェイが働く可能性が知られており、DNA 損傷応答キナーゼと細胞周期に関するRIBE の研究も少しずつ報告され始めたが、非照射細胞の細胞周期に着目した文献は少ないため、諸条件の確立に時間を要した。加えて所属先の異動に伴い、令和2年度は正常細胞であるAG01522株を用いた研究や、高LETの炭素線を用いた照射実験が未実施となった。しかしながら、複数のがん細胞株を用いたX線照射実験を優先的に進めることで直接効果による細胞応答やRIBEの誘導に関する基礎的な知見は徐々に取得できており、概ね滞りなく本研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、前年度までに確立した実験条件下で、RIBE が誘導されない放射線抵抗性のがん細胞株と誘導される細胞株の特徴を活かして上で、非照射細胞に誘導されるDNA 損傷のプロセスや修復経路の寄与を明らかにする。非照射細胞の細胞周期がRIBE誘導に与える影響を明らかにする。その過程において、非照射細胞の細胞周期分布と連動したDNA修復経路の関与を探る。DNA損傷応答キナーゼ阻害剤で処理し、各種比較することで、ATR 経路の活性化に着目して、解析を進める。バイスタンダーで誘発された複製ストレスの蓄積によるDNA 損傷(二本鎖切断)を確認するため、ATM やDNA-PKcs シグナル経路に着目し、タイムコース実験を実施する。 また、RIBE 誘導の有無には、複数の細胞間シグナル伝達物質関与が考えられる。そのため、活性酸素種や一酸化窒素ラジカル、サイトカイン(TNF-α)を定量し、原因物質を同定する。令和3年度には、X線以外の放射線も利用し、線質の違いによるRIBE誘導も同様に検証する予定である。
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Causes of Carryover |
参加予定であった学会の発表形態の変更により参加を見送ったことや、当初予定していた令和2年度照射実験の変更に伴い、次年度使用額が生じた。 令和2年度に未実施となったX線以外の線種を用いた放射線実験は、令和3年度に実施予定である。そのための実験消耗品や試薬類の購入に次年度使用額分を使用する。
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Research Products
(2 results)