2020 Fiscal Year Research-status Report
放射線が誘発する細胞内温度、pH変化とそのダイナミクスの解明
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20K19969
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
神長 輝一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 博士研究員(任常) (90825176)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞内温度 / DNA損傷 / 蛍光ナノダイヤモンド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、電離放射線が誘発するDNA損傷およびミトコンドリア損傷に起因する、ATP加水分解の亢進と、ミトコンドリア脱共役による温度およびpHの経時変化、そしてその生物学的意義の解明を目指すものである。温度およびpHの計測は蛍光ナノダイヤモンドを用いる。今年度は、培養細胞への蛍光ナノダイヤモンド導入法を最適化するため、蛍光ナノダイヤモンドの粒子径および表面修飾方法、濃度の検討を行った。検討の結果、蛍光ナノダイヤモンドの培地中での分散性を確保するため、表面のカルボキシ化が必要であることが分かった。さらに、細胞内の蛍光ナノダイヤモンド数は培地への添加濃度依存的に増加するが、オーバーナイトで蛍光ナノダイヤモンドを添加した場合、数100ug/ml以上の濃度では培養中に細胞が剥離することから100ug/ml程度が至適濃度であると判断した。 さらに、リソソームを緑色に染色し、蛍光ナノダイヤモンドの赤色蛍光との共局在を確認したところ、大半の蛍光ナノダイヤモンドがリソソーム内に存在することが確認された。このことから培地に添加された蛍光ナノダイヤモンドはエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、エンドソームからリソソームに移行していると考えられた。この方法を用いて蛍光ナノダイヤモンドを導入したHeLa細胞およびBJ-5ta細胞に、X線照射装置を用いてX線10Gyを照射し、照射1~2時間後の細胞内温度を計測した。各細胞の細胞内温度を0.5-1℃の精度で計測することに成功し、X線照射により細胞内温度が上昇する可能性を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では今年度細胞内pHの計測を試みる予定であったが、新型コロナウイルス感染症対策による在宅勤務の増加により、細胞内pH計測システムの開発、および細胞内pHに適合するセンサーの開発が滞った。そのため、2年目以降に実施予定であったX線照射後の細胞内温度計測を先行することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症流行に伴い遅延している細胞内pH計測技術の開発、および細胞内pHに適したナノダイヤモンドpHセンサーの開発を進めていく。さらに、ミトコンドリアなどのオルガネラ局在性ナノダイヤモンドセンサーの開発を進める。オルガネラ局在性ナノダイヤモンドはナノダイヤモンド表面に各オルガネラ局在性ペプチドを修飾することで実現する予定である。オルガネラ局在性ナノダイヤモンドの検証は超解像顕微鏡を用いた標的オルガノイドとの共局在解析により検証する。 さらにX線照射による細胞内温度上昇の線量依存性およびDNA損傷応答との関連を解明する。まず、今年度得られた10GyのX線照射による細胞内温度上昇の可能性を示唆する結果を再確認する。また、低線量域(0.1Gy程度)から高線量域(10Gy)照射後の細胞内温度を計測し、X線照射による細胞内温度上昇に閾値が存在するのか、あるいは線量依存的な細胞内温度上昇を示すのか検証を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行により実験に遅延が生じたため。消耗品購入費として翌年度使用する。
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Research Products
(3 results)