2020 Fiscal Year Research-status Report
中国のパブリック・ディプロマシーにおける準政府アクターの動員
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20K20068
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
張 雪斌 早稲田大学, 総合研究機構, 次席研究員 (10781536)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パブリック・ディプロマシー / 広報文化外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、党中央への集権化とアクターの多様化が同時に進行している中国のパブリック・ディプロマシー(以下PDと記す)の組織的、経済的基盤を調査、分析することで、近年中国のPDにおける政策実施のダイナミズムを実証的に解明することである。 令和2年度において本研究は計画通り、文献研究を中心とした先行研究を行った。具体的には、まずPDに関連する日中英語資料、文献を収集し解読を行った。近年SNSでの発信と政治、外交の相互作用が注目されるなか、SNSを利用した宣伝広報を取り挙げた優れた研究が増えている。本研究はこれらの研究資料、文献を対象とする先行研究を行うことで、中国のPDを理解するために必要な知見を得ているだけでなく、中国とアメリカをはじめとする西側諸国との広報宣伝競争に対する理解を深めている。 そして、本研究は中国で出版されたPD関連の文献と、中国政府、メディア、研究機関が公開している資料や情報を幅広く収集し、分析を行った。中国で最初に発見されたコロナウィルスによる世界規模での感染拡大を背景に、中国政府は各種対外宣伝広報を強化してきた。本研究はPDを担当する中国政府機関の役割調整に注目し、各機関の政策文章を調べつつ、存在感を強めている外交部の動向を分析している。 さらに、本研究は中国の政府機関とPD活動に携わるいくつかの準政府機関、研究機関の関係についての資料調査を行った。それらの準政府機関、研究機関が公開している情報や研究成果を基に、聞き取り調査の対象を選定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年の段階においては、本研究は概ね計画通りに進展している。代表者の所属機関である早稲田大学のデータベースを活かし、本研究は比較的にスムーズに文献、情報収集を行った。そして、早稲田大学現代中国研究所の関係者からの助言を参考に、本研究はいくつか重要な文献を入手し、あるいはアクセスできた。 ただし、新型コロナウィルスによる感染拡大の影響を受け、当初令和3年度に予定されていた現地調査、聞き取り調査の実施には相当な困難が生じると考えられる。そして、本研究代表者の所属機関変更に伴い、文献や資料へのアクセスにも一定の困難が生じると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
必要な文献調査を継続し、計画通りに聞き取り調査を実現するには、本研究は今後、以下のように取り組む予定である。まず、引き続き早稲田大学現代中国研究所の関係者と連携しつつ、PDの専門家、実務家からの助言を求める。現地調査、聞き取り調査が実施できない現状に鑑みて、オンライン・インタビューの可能性を模索し、積極的に実施する。そして、現地調査のために申請した予算の一部の使途を、資料調査と通信設備の購入に変更する。具体的には、効率的に文献を入手し、データベースにアクセスするために研究補助者を雇用することや、オンライン・インタビューに必要な備品の購入を考えている。なお、効果的にインタビュー調査を実施することができない場合は、研究スケジュールを柔軟に変更し、文献調査の範囲を拡大することで対応する予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度においては新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、現地調査及び日本国内での研究活動に必要な交通費を支出しなかったため、上記の次年度使用額が生じたのである。令和3年度では計画通りに現地調査を実施したいが、実施が困難な場合はオンライン通信機器など必要な備品購入や外国語文献調達に充てる予定である。
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