2018 Fiscal Year Annual Research Report
An Empirical Research on the Buddhist Meditaion(zhiguan) and Mindfulness by Cooperation of Buddhism, Psychology and Brain Science
Project/Area Number |
18H05302
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蓑輪 顕量 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30261134)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 隆嗣 こども教育宝仙大学, こども教育学部, 教授 (00322975)
今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123)
越川 房子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80234748)
佐久間 秀範 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90225839)
熊野 宏昭 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90280875)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | 念 / 正知 / 転不転 / デフォルトモードネットワーク / マインドフルネス集団療法 / 脳波とマインドフルネス / 止観の順序 / 社会的QOL |
Outline of Annual Research Achievements |
仏教学方面からは林が観察の際の心の働きに念と正知という二つの働きが意識されていることを明らかにし、正知は意味の揺れ幅が大きい語であることを示した。佐久間は唯識でも同様な対象の把握がなされていることを明らかにし、蓑輪は特任の岡田とともに中国天台において瞑想の負の側面に対する6通りの対処方法が挙げられていることを明らかにした。 脳科学方面からは今水が止観瞑想に重要な影響を与える3つの脳内ネットワークに着目し、瞑想の熟練者3名と未経験者11名について、安静時脳活動の解析を行った。熟練者では3つのネットワークのうちデフォルトモードネットワークの活動に特徴があることを見いだした。また、マインドフルネス瞑想が認知機能に与える影響を調べ、短時間の集中瞑想トレーニングを行う前後で、注意を向ける準備をする課題に変化の傾向が現れることを明らかにした。 心理学分野で熊野は瞑想熟練者が止と観瞑想をそれぞれ実践している時の脳波を測定した。その結果マインドワンダリングに気づいて瞑想に戻る時に観瞑想の方がデルタ波が低い傾向が見られ、より目覚めている状態と対応すると考えられる事を明らかにした。また止と観瞑想を組み合わせた現代的なプログラムであるマインドフルネス集団療法を、うつと不安の問題を抱える患者に実施したところ、同様にマインドワンダリングへのメタ的気づきが特に向上し、伝統的な観瞑想と類似の効果があると考えられた。越川は初心者における止と観瞑想の指導と実践の順序による効果の現れ方の相違について、30名の実験協力者を対象として検討した。また仏教の修行では重視されているが、マインドフルネス瞑想の指導では考慮されない戒律の遵守とマインドフルネス特性との関係を調査研究によって検討し、学会で報告して優秀研究賞を受賞した。3月末には奈良で止観マインドフルネス研究最前線と題し3分野共同でシンポジウムを開いた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としては順調である。仏教班は止観の観察の際に働く心作用が念と正知で表現される伝統を文献から実証的に明らかにし、それぞれ心作用の相違が意識されていたことを示せた。また瞑想時のマイナス的な反応への対処については智顗の初期の資料を含めて明らかにできたところは予定よりも進んだところである。 脳科学分野では今水が脳内ネットワークの解析に関しエキスパート2名ではデフォルトモードネットワークの活動の変動が未経験者よりも低くなっていることを明らかにした。もう1名のエキスパートでは未経験者よりもその変動が大きかったが、それは瞑想訓練の方法による違いと考えられる。集中瞑想による注意機能の変化については、注意を向ける準備をする課題に変化の傾向が見られたものの、普段からマインドフルネス的な生活をしているか否かで個人差が大きいことがわかったが、順調に進んでいる。 心理学面では熊野は瞑想熟練者に対する実験で17人までサンプルを集めた。現在、脳波の詳細な解析を進め、国際誌に投稿する準備を進めている。マインドフルネス集団療法の介入試験は、パイロットスタディとして統制群を設けない単群のデザインで、うつ及び不安症状の減少とマインドワンダリング傾向の変化などを確認した。次に40人を目標サンプルサイズとしてランダム化、比較試験を実施中である。越川は止と観のどちらを先に実践するかによって効果の現れ方に違いがあることを見いだした。止先行群では「社会的領域」におけるQOLが増加し、マインドフルネス特性における「身体的領域」のQOLが増加し、観先行群では「身体的領域」におけるQOLが増加し、マインドフルネス特性における「今ここに存在すること」が増加した。認知実験では実践順に関係なく注意を切り替える力が増加することを明らかにできた。研究は順調であるが、三分野における研究の連関性にもう少し意識的になる必要はある。
|
Strategy for Future Research Activity |
仏教学面では林は「瞑想における負の側面」についてパーリ註釈文献に存在する豊富な事例を、その対応策とともに確認し検討する。佐久間は3領域の共同という視点から枠組みを再構築する。蓑輪は特任研究員とともに漢訳資料に見られるマイナス面の対応について、その記述の背景に目を配りながら研究を進める。さらに3分野の共同になるよう統括に務める。 脳科学面では、今水は初年度の実績から個人差の要因が大きいことが示唆されたことに鑑み、如何なる方法で瞑想のトレーニングを受けてきたか、普段の生活においてどの程度マインドフルネスに留意しているかによって、脳活動のパターンや短期的な訓練の効果も異なるとの予想のもとに今後の実験協力者の選定を進め、エキスパートの脳活動を計測する。また、短期間のトレーニングについては集中瞑想の他に洞察瞑想のトレーニングを行う被験者群を集め、結果を比較する。 心理学面では、熊野は統制群を設けたマインドフルネス集団療法を引き続き実施し、目標人数の40人までデータを集める。そのデータを解析しマインドワンダリングへのメタ的気づきの変化を検討する。またその能力の向上がうつと不安の改善と如何に関わっているかを検討する。また止観瞑想の有効性を、マインドフルネス集団療法によってうつと不安の改善が見られる人と見られない人の特徴の違いを、種々の心理検査や行動データから検討する。越川は前年度に収集されたデータの解析を進める。止と観瞑想の順序効果を検討したが、今年度は新たに止瞑想のみ、観瞑想のみを4週間実践する群を設定し、4週間という期間において、それぞれの瞑想を単独に実施した場合の結果(2019年度の実験により収集)と両瞑想を組み合わせた場合の効果(2018年度の実験により収集済み)を比較検討する。初心者が困難を感じる点やネガティブな反応をそれぞれの瞑想や実践の順序ごとに明らかにする。
|
Research Products
(22 results)