2020 Fiscal Year Research-status Report
電気化学反応と高温熱化学平衡を利用して充放電する「カーボン空気二次電池」の提案
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20K20364
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊原 学 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90270884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 馨 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50644944)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 固体酸化物燃料電池 / 蓄電デバイス / CO2電解 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素の酸化還元を軸とし、高温電気化学を用いた燃料電池/蓄電池のハイブリッド型蓄電デバイスを新たに提案する。炭素のエネルギー密度は重量基準で32.8 kJ/g、体積基準で66 kJ/cm3でありリチウム(40.7kJ/g, 20.8 kJ/cm3)と同等なため、リチウムイオン電池の数倍、リチウム空気電池と同レベルの蓄電が原理的には可能である。本研究では、電気化学反応と高温の熱平衡反応を組み合わせて利用することで、電気化学的な反応だけでは実現困難な「C+O2の酸化還元によるストレージ法」を「カーボン空気二次電池」として提案し、基本概念を実証して、カーボン空気二次電池の可能性を明確にすることを目的とする。2019年度は、特に充電時の炭素析出のメカニズムについて考察した。また、「カーボン空気二次電池システム」に求められる電極について、要件や開発の方向性などについて検討した。 2020年度は、検討したメカニズムをもとに、電極材料及びシステムの検討を行った。電極材料においては、高CO分圧かつ炭素析出が起こりやすい雰囲気下での電解特性について、複数の材料の適性を検討した。また、これまでの密封系で時間とともにガス雰囲気が変化する実際の「カーボン空気二次電池」条件に加えて、ガス濃度を規定した系における電気化学評価を行い、結果を照合して、より詳細な反応メカニズムを検討した。電極酸化物材料の違い及び、電極構造の違いが電解特性に与える影響を検討した。100%CO2の電解に対してどのように特性が変化するかを検討し、材料だけでなく多孔度などの構造の違いの依存性が高いことを確認した。水素燃料電池及び水電解において、ZrO2系電極とCeO2系電極の違いがCO2電解特性に与える影響を調べ、また、CO/CO2/Ar比を規定した混合ガスで発電・電解特性の測定が可能となるよう機器を改良し、評価を可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度までに閉鎖系でのCO2電解によるCO及び固体炭素の生成とその逆反応である発電の繰り返しが可能であることを明らかにした一方で、可逆充放電の特性を向上するためには、特にCO2電解の過電圧の低減が重要であると示唆された。よって、高CO/CO2比で炭素が析出する場における電解特性をNi/GDCおよびNi/YSZ燃料極SOFCを使用して充放電特性を比較した。過去の文献において両者の特性の間に大きな差異は確認できなかったことから、材料特性だけでなく多孔度などの電極構造の違いが性能に影響していると考えられるため、電極膜厚(30μm-40μm)及び多孔度(30%-52%)が異なる電極をそれぞれ作製し、性能の評価を行った。その結果、多孔度が小さいほど特性が向上した。今後、三相界面長など電極特性に直接影響すると考えられるファクターを指標として引き続き検討を行う。 また、炭素を活物質とする新規な二次電池システムの、リチウムイオン電池など従来の二次電池に対する優位性を議論した。システムとして充放電を行うSOFC/ECデバイス部分と炭素を貯蔵する部分を(1)セル内部に貯蔵する(2)触媒とともにセル外部に貯蔵する(3)炭素のみをセル外部に貯蔵する、の3ケースに分けて仮想的に設計し、その体積比率によって変化する重量あたり/体積当たりのエネルギー密度/出力密度を試算した。ケース(1)において一定以上の空間堆積を持たせることで1000 Wh/Lを達成できることがわかった。(2)(3)においてはさらに高いエネルギー密度を達成できるが、炭素の析出、貯蔵プロセスを別途検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討を通じて、本システムにおいては電極三相界面上への炭素の析出による電気化学反応速度の低下を抑制し、過電圧を低減することが重要であることがわかった。よって、2021年度はその選択的な炭素析出の制御に関して、電極材料及びシステム両面で検討を行う。電極としては、本研究室でのDCFCやドライメタン発電に関する研究においてプロトン伝導性酸化物の添加が、電極上の炭素析出に有効であることが示唆されている。また、本研究室で開発された層状ペロブスカイト構造のプロトン伝導体は高いプロトン伝導率とプロトン輸率を持つことから、その添加効果を検討する。同時に、電極(金属及び酸化物)や電解質材料に関しても、電解に関する文献調査を踏まえたうえで、上記のペロブスカイト系材料に対して複数の組み合わせを、H+やO2-結合エネルギーの計算など計算化学的手法も用いて検討する。 電気化学評価、検討に対しては、本研究室でこれまでH2/H2O系で構築してきた、電極上の電気化学反応モデルを軸に、CO/CO2の反応系に対する反応モデルを構築し、それをもとに電極上の化学種の被覆率を議論することで行う。本研究の高いCO/CO2比で炭素析出が平衡反応で起こるという系において、炭素析出に電極添加物が影響するメカニズムの考察と合わせて検討を行う。三相界面上の反応モデルを用いることにより、電極表面、界面の状態と反応の関係性を定量的に議論できると考えている。材料の添加効果に対しても、反応モデルを用いてその特性を評価できると考えている。
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Causes of Carryover |
一部の消耗品において、コロナの影響で年度内の納入が不透明となったため、発注を見送った。次年度に発注を行う。
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Research Products
(1 results)