2018 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Optically-Functional Materials Based on Excitation-Driven Element-Blocks
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18H05356
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中條 善樹 京都大学, 工学研究科, 名誉教授 (70144128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 一生 京都大学, 工学研究科, 教授 (90435660)
権 正行 京都大学, 工学研究科, 助教 (90776618)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ホウ素錯体 / 発光 / 凝集誘起型発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
A. 理論予測によるAIE性ホウ素錯体の創出 AIE性分子を得るための設計指針と手法を確立することを目的とした。まず、密度汎関数法(DFT)と時間依存密度汎関数法(TD-DFT)により得られた基底・励起状態での最安定構造を比較し、差が大きなものをスクリーニングした。現在、いくつかの新奇骨格を見出し、これらを中心にホウ素錯体を選定した。次に、上記で得られた分子を合成し、固体中で溶液よりも発光効率が向上することを確認することでAIE性の検証を行った。また、ストークスシフトの幅や液体窒素温度下で分子運動を凍結させること、透明な高分子薄膜中に担持すること、高粘性溶媒中で発光の増大を観測することで、励起状態の分子の運動性抑制がAIE性発現に結びついていることについて解析を進めた。 B. 既存の発光色素におけるAIE性付与 ボロンジピロメテン錯体(BODIPY)は、優れた物性を有することから、最も汎用性の高い発光色素としてバイオ・マテリアルの両面で使用されている。一方、強い濃度消光を示すことから、固体では溶液に比べほとんど光らない。このようなBODIPYに励起駆動機構を導入しAIE性分子に変換することができれば、本実験手法の有効性を示すと共に、高輝度固体発光材料を得ることができる。この考えの元、研究を進めた。具体的にはBODIPYのフッ素をフェニル基に置換したものを合成した。TD-DFTによる計算より、励起状態でフェニル基の回転が示唆され、予備検討でもフェニル基修飾BODIPYではストークスシフトが大きくなり、構造緩和の進行が支持された。光学測定の結果、AIE性は小さかったことから、より明瞭な挙動を示すための分子設計を進める。具体的には、ホウ素上の電子密度を増大させ、ジピロメテン配位子へのホウ素の配位を弱めることを目的とした電子供与性基を有する修飾BODIPYの合成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、材料構築の足場となるそれぞれの新規元素ブロックの合成と、それらを基盤とすることで広範な化合物ライブラリーを得ることが技術的に最も困難である。特に、本研究で主題となる柔軟な錯体では、空気中で安定に存在できないことや、光学測定時に分解することが多分に予想された。したがって、それらの課題克服に研究期間を多く取られることが想定されていた。本年度は、これらの新規元素ブロックの合成に加え、類縁体合成などの化合物ライブラリーを得ることについて最優先で研究を進めてきたが、予想よりも早く合成目標の元素ブロックが得られてきたことと、それらが安定であることが明らかとなった。さらにそれらを用いた類縁体からは目的となる物性が得られ、メカニズムに関する知見を得ることができた。そのため、さらなる段階の応用などを視野に入れることができている。特に、合成を比較的スムーズに達成することができたことから、物性解析を重点的に行うことで、新たな物性探索を行うこともできた。そのため、目標となる物性以外にも新しい物理現象を発見したことや、新奇の化学原理につながる実験データを取得することができた。 例えば、メタロフルオレンのテーマについては、当初は電子状態のみに注目し、共役系構築を進めてきたが、分子の運動性が発光特性に非常に大きく影響を及ぼすことが明らかとなってきた。この現象を利用することで、これまでに検出が困難であった微細な環境の変化を視覚化する化学センサーへの利用が期待できる。 また、AIE性の化合物について、研究を進める中で固体発光色変化が見出された。これらを制御することで刺激応答性固体発光材料など、次世代有機EL素子に展開が可能な僅少な材料を新原理で得られる可能性が出てきたことなど、基礎研究の枠を超えて応用にまで展開することが視野に入ってきたことから、本年度は予想以上に研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
A. 理論予測によるAIE性ホウ素錯体の創出 まず構造緩和の予想部位に縮環構造や立体障害のある置換基導入により分子を固定化し、AIE性の消失を確認することで、計算結果の妥当性の評価を進める。また、高分子化による連結位置を変えることで運動性を調節し、発光特性への影響を調べる。想定される問題点としては、AIE性分子ではパッキングが疎になることが多く、単結晶X線構造解析の適用が困難となることが予想される。その場合、粉末X線回折の測定を行い、その結果からリートベルト解析により結晶構造を推定する。 B. 既存の発光色素におけるAIE性付与 AIE性発現のためには、さらに大きな構造緩和が必要であると予想したことから、ホウ素上の電子密度を増大させ、ホウ素の配位を弱めることを目的とした電子供与性基を有する修飾BODIPYの合成を進める。この戦略でAIEを実現できれば、励起駆動機構の付与を実現できたことを意味し、一般性を示すことができると期待している。想定される問題としては、濃度消光によりAIEを確認できない場合が想定される。その場合、電子状態への影響が低いと考えられるメソ位にさらに立体置換基を導入する。 C. 平面性の高いAIE性分子の創出と共役系高分子開発 “励起駆動型ホウ素錯体”でしか得られないAIE性分子の開発を行う。既存のAIE性分子では芳香環部位の分子運動で溶液中での消光を引き起こし、立体障害により分子間相互作用を阻害することで固体発光を得てきた。一方、これらの芳香環は発光色素部位のπ平面とねじれの位置にあり、共役系の伸長は大きく制限されていた。また、既存のAIE性分子を高分子化しても、薄膜中ではこれらの芳香環の分子運動が抑制されず、固体発光性が大きく低下していた。そこで本テーマでは、ねじれた芳香環や立体障害の大きな置換基を持たず、高い平面性を有するAIE性分子の創出を目指す。
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Research Products
(21 results)