2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H05362
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
吉岡 基 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30262992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船坂 徳子 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50616175)
鈴木 美和 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70409069)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | イルカ / 脂皮 / 甲状腺 / ホルモン / 水温 |
Outline of Annual Research Achievements |
鯨類には他の哺乳類には例をみないブラバー(脂皮)と呼ばれる厚い皮下脂肪組織が形成されるが,この厚さや構成成分が個体の繁殖活動と生理学的にどのように関わっているかについてはまったく知見がない.そこで,「脂肪組織を介した器官間のクロストークが鯨類の繁殖を制御する」という仮説を立て,2019年度はこの検証実験に引き続き取り組んだ.具体的には,複数の水族館から年間を通した血中ホルモン,その他血液生化学成分の分析に必要な雌ハンドウイルカ(成熟個体 n=4,未成熟個体 n=5)からの試料採取を継続して実施した.このうちのホルモン分析については,以後の詳細分析を行う対象となるホルモンを特定するために必要な基礎情報を得るため,LC-MS/MS(液体クロマトグラフィー質量分析)法による血漿中成分濃度測定にかかわるバリデーション試験を行った.また,脂肪組織の状態の調査として,まずは採取器具の改良が必要であることが判明したため,関係メーカーと共同で改良を行った.続いて,季節ごと(10,1,4,7月を予定)の脂肪の組成や物質生産をモニターするために必要な生検試料を上記対象個体から採取した.これを用いて,RNAseq(遺伝子発現解析)を行い,脂皮中の遺伝子発現状況をみたところ,性成熟個体と未成熟個体との間で発現量に差違があり,かつ繁殖制御に関わる可能性のある遺伝子が複数認められた.また,採取後の生検試料の前処理として最適な方法を探るための実験を行い,処理方法を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大により,水族館に赴いての試料採取が計画通りに行えず,2季節をカバーする予定が1季節をカバーするにとどまった.加えて,試料採取を行ってみての問題点も明らかになったため,その改善・改良に時間を要し,当初予定の年間を通じた試料採取が実施出来なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
生検試料採取器具の改良と採取した試料の前処理法の検討が終了したため,今後は,COVID-19による移動制限がなければ,予定どおりの生検試料の採取が可能と見込まれる.なお,2020年10月に採取した生検試料から想定していなかった新知見が得られており,これについても併行して解析を進める.国内各地の園館の鯨類飼育環境に関する統計学的データの解析は継続して行う.年間を通した実験対象個体からの定期的な採血は順調に進んでいるため,一連の試料収集完了後ホルモン分析にとりかかる.
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