2019 Fiscal Year Annual Research Report
異常蛋白発現時期により多発性硬化症から多系統萎縮症へ移行する新モデルとグリア治療
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19H05562
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉良 潤一 九州大学, 医学研究院, 教授 (40183305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立川 正憲 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (00401810)
松下 拓也 九州大学, 大学病院, 講師 (00533001)
山口 浩雄 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00701830)
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
渡邉 充 九州大学, 大学病院, 助教 (30748009)
松瀬 大 九州大学, 医学研究院, 助教 (70596395)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 小脳型多系統萎縮症 / 進行型多発性硬化症 / シヌクレイン / オリゴデンドロサイト / ミクログリア / アストロサイト / コネキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちが新規に樹立した、生後望む時期にオリゴデンドロサイト特異的にαシヌクレインを蓄積しうる小脳型多系統萎縮症/進行型多発性硬化症モデルマウスの解析を進めた。行動学的評価では、生後8週齢からαシヌクレインが蓄積するマウスにおいて、生後20-22週齢ごろから運動麻痺や運動失調が生じ、ロタロッドテストで低下を示してくることが分かった。このマウスの病理学的解析では、αシヌクレインが蓄積する脳幹や脊髄の病変部でarginase-1陽性ミクログリア活性化と、アストロサイトやオリゴデンドロサイトの細胞膜上のコネキシン蛋白群の広範な脱落がきわめて顕著であり、脱髄・オリゴデンドログリア細胞死に先行することを見出した。ウエスタンブロットでは、発症後のマウス脳幹や脊髄でαシヌクレインが不溶性画分に多く存在し、オリゴマーなど凝集体を形成することを明らかにした。また、本マウスで変動する分子を脳幹および脊髄のRNAマイクロアレイで解析し、自然免疫系に係る因子が多数発現亢進しており、とくにミクログリアの活性化や生存に重要なColony stimulating factor 1 receptor(CSF1R)の発現亢進を見出した。さらに、治療介入時期を明らかにするため、発症直後の生後24週齢でαシヌクレインの蓄積を中断させると、神経症状や病理所見がほぼ正常にまで改善することを見出し、生後27週齢での中断ではその改善は部分的であることも判明した。従って、生後24週齢頃がこのマウスにおける適切な治療介入時期と判断し、ミクログリア除去薬であるCSF1R阻害薬の投与を試みた。生後22-24週頃の発症前後にCSF1R阻害薬を2-4週間連日経口投与し、現在神経症状や病理所見を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回私たちが樹立した新規小脳型多系統萎縮症/進行型多発性硬化症モデルマウスの行動解析、病理学的解析、生化学的解析まで順調に遂行できており、発症や神経症状が明瞭で進行が速いことから治療候補薬スクリーニングにも適していることが明らかとなった。αシヌクレイン発現抑制実験から、本モデルマウスの治療介入時期を決定することができ、CSF1R阻害薬を用いた活性化ミクログリア除去による影響・効果を検討する段階まで進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本モデルマウスは神経症状や病理所見が明瞭でかつ、その進行が従来の多系統萎縮症モデルよりも速いため、病態研究に加えて新規治療薬候補のスクリーニングに適した新たなモデルに位置づけられる。行動解析(ロタロッドテストやフットプリント)、病理組織解析(酵素抗体法、蛍光抗体法による各種免疫染色)、生化学的解析(ウエスタンブロット、RNAマイクロアレイ)、免疫学的解析(FACS sorting、グリア細胞単離、グリア細胞培養)、高感度デジタルELISA(Simoa)など複数の実験的手法を採用し、バイオマーカー探索や病態研究を推進する。また、すでに幾つかの治療候補薬を挙げており、次年度は順次これらの候補薬をマウスに投与して治療的効果を検討する予定である。加えて、当科の進行型多発性硬化症および多系統萎縮症患者の髄液、血液、臨床情報をチームとして集積しており(本学倫理審査委員会承認済)、ヒト剖検標本を用いた病理学的検証も進めている(本学神経病理学講座と連携)。ヒト患者検体を用いてマウスデータの検証を行えることは当教室の大きなアドバンテージと考えられる。
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Research Products
(27 results)