2020 Fiscal Year Research-status Report
Interdisciplinary Research for Ethical, Legal, and Social Issues on Gene Drive
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20K20493
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
藤木 篤 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (80609248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三成 寿作 京都大学, iPS細胞研究所, 特定准教授 (60635332)
四ノ宮 成祥 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 分子生体制御学, 教授 (40505260)
立川 雅司 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40356324)
井上 悠輔 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (30378658)
大庭 弘継 京都大学, 地域連携教育研究推進ユニット, 特任研究員 (00609795)
吉良 貴之 宇都宮共和大学, シティライフ学部, 講師 (50710919)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝子ドライブ / ゲノム編集 / パブリックエンゲージメント / デュアルユース / テクノロジーアセスメント / ガバナンス形成 / 世代間倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ゲノム編集技術の応用形態として知られる「遺伝子ドライブ」の倫理的・法的・社会的課題を明らかにすることである。初年度にあたる令和2年度は、遺伝子ドライブに関する既存情報の整理・共有を中心とした、今後の研究基盤の構築を目標として設定した。他国あるいは国際的組織の動向に注視しつつ、特に遺伝子ドライブの倫理的・法的・社会的課題について言及された公的資料を網羅的に収集し、分析を行った。 その結果、明らかになったことのひとつは、2020年の段階で、既に「より安全かつ制御可能な」遺伝子ドライブの研究開発がある程度進んでいるという状況である。遺伝子ドライブは成熟した技術ではなく、十分なリスク評価が行われているとは言いがたい。意図せぬかたちで、自然環境や生態系に深刻かつ不可逆な影響を及ぼす可能性も指摘されている。そのため、科学者達からは、遺伝子ドライブの安全性に関する懸念が示されてきた。このような背景から、「より安全かつ制御可能な」かたちでの遺伝子ドライブ技術の洗練が、以前から求められていたのである。従来より、"Killer-Rescueシステム" (Gould et al., 2008)や"Daisy Chain Drive"(Esvelt and Gemmell, 2017)といった自己制御式の方法が提唱されてきていたが、理論上の提案という性格が強く、実用化に至るまでの道のりは必ずしもはっきりと見通せるものではなかった。現在はそれらに加えて、「リンクド・ホーミング」等、さらに複数の遺伝子ドライブのヴァリエーションが提唱されている。しかしながらこうした一連の技術に間する、技術的-思想的連続性もしくは不連続性については、国際的にも、未だ詳細な調査が行われているとは言いがたい状況である。 次年度は、今年度の研究で得られたこうした結果を、学会等の場で発表できるよう努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響により、研究活動が大きく制約を受けたため、当初の研究計画と対比した場合、進捗状況はやや遅れていると言わざるをえない。論文や書籍、報告書等のサーヴェイ、および科学者団体主催のオンラインセミナーへの参加等から、遺伝子ドライブを巡る最新の動向が、ある程度得られていると判断する。一方で、研究代表者および研究分担者による対面での研究会、および海外の研究者・有識者を招聘しての意見交換が十分には実現できていない。研究成果の共有を目的とした研究会については、時機を見ながら、もし可能であれば次年度前半に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究結果を研究メンバー間で共有し、それらをさらに論文や口頭発表のかたちでアウトプットしていくことを目標に掲げる。その過程で、国内外の研究者と本研究課題に関する意見交換を行う。ただし新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響については、国内では医療従事者や高齢者を対象としたワクチン接種が開始されたものの、変異株の登場等により、依然として予断を許さない状況が続いている。緊急事態宣言や「まん延防止等重点措置」等の動向に最大限配慮しながら、感染拡大防止に対して差し支えのない範囲で、研究活動を継続していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初計画していた対面での研究会および海外の研究者を招聘しての意見交換が実施できなかったため。次年度以降は、新型コロナウイルス感染症の流行状況に注視しつつ、もし可能であれば、感染防止対策を徹底しながら対面での研究会を複数回開催する予定である。
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Research Products
(16 results)