2020 Fiscal Year Research-status Report
理論と実験の協働による時空間リズムダイナミクス研究の新手法の開拓
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20K20520
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
國府 寛司 京都大学, 理学研究科, 教授 (50202057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 淑子 京都大学, 理学研究科, 教授 (10183857)
青柳 富誌生 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90252486)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 力学系 / リズム / 時空間ダイナミクス / データ駆動 / モデルフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
[時空間ダイナミクスの全構造計算法] Switching system と呼ばれる区分線型ベクトル場は遺伝子制御ネットワークの数理モデルとして広く用いられているが,そのダイナミクスの全構造計算法の開発を進めた.また,時系列データからのダイナミクスの推定のための方法としてリザバー計算と呼ばれる機械学習法に着目し,そのダイナミクスの推定の数学的メカニズムを検討した. [普遍位相振動子結合系の時空間相互作用の推定] リミットサイクル振動が相互作用していると考えられる系の時系列データから,結合振動子モデルの存在だけを仮定し,その相互作用を推定するため,次の2点の理論的研究を行った.①ガウス過程回帰(Gaussian Process Regression)を用いて相互作用関数を推定する手法を開発した.特に周期性を仮定したカーネル関数を用いて,データの偏りに対して従来よりロバストな推定が可能になる予備的結果を得た.②ニューロン集団のような集団としてリズムを生成している多自由度力学系が互いに相互作用している場合に,個別の素子の一部の変数や平均場などの部分的観測データから,集団間の相互作用を抽出する理論的検証を行った.特に,平均場や個々の変数の選び方に依存せず,同一の相互作用関数を推定することを示した. [時空間リズムダイナミクスの実験的研究] 腸の蠕動運動では,個々の細胞が収縮振動性を発揮すると共に,それらが協調して組織や器官レベルで統合された蠕動運動振動を可能としている.本年度は,細胞レベルでの振動現象を解析するために,これらの解析に適したニワトリ胚の腸筋肉層由来細胞を用いた培養系の確立を試みた.10種類の異なる培養液と4種類の細胞外基質を組みあわせて,腸筋肉層由来の細胞の長期間培養条件を最適化した.また,細胞における振動現象の可視化にあたり,細胞内カルシウムイオン濃度レベルの変化に注目した解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度当初からの新型コロナウィルス感染拡大のため,研究活動が大きく制約された.特に実験研究は研究室の閉鎖や研究活動の制限のため実施が極めて困難な時期があり,その後も様々な制約のため当初の予定は相当に遅れている.また予定していた研究情報収集のために出席を予定していた学会が中止になったり,関連研究者の招へいなどもできなくなったため,理論研究においてもかなりの遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
時空間ダイナミクスの全構造計算については,空間構造を反映する解析法の開発を目指す. 位相振動子結合系の時空間相互作用の推定については,ネットワークとしての2体相互作用を推定するこれまでの手法を拡充して,時空間の現象に対して,データ駆動型で偏微分方程式を導出する手法の開発と数値実験による実証を行う. これらを統合し,直感的に数理モデルを構築するのが難しい,腸の蠕動運動などの生物の実験データに適用し,データ駆動型の時空間ダイナミクス研究の基盤構築を行うことを目指す.
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Causes of Carryover |
繰り越しの経費が大幅に大きかったのは,主として型コロナウィルス感染拡大の収束の時期が判然とせず,特に情報収集や学会の開催に関係する出張費が執行できなかったこと,実験室の閉鎖や抑制などのため特に実験系の研究活動に大きな支障が出たこと,さらに半導体不足の影響で計算サーバー等の納入が遅れたことなどが原因である.次年度からは,遠隔で議論・共同研究をするための会議システムやソフトの拡充 (セキュリティも考慮する)にも経費を充当する.また,感染症が収束した後には積極的に学会等に成果を発表する経費にも使用する.納入の遅れていた計算サーバーも性能をアップデートして購入する計画である.
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Research Products
(20 results)