2022 Fiscal Year Research-status Report
戦災のもたらす心霊現象の社会学：〈見えないもの〉の記録と継承
| Project/Area Number |
20K20791
|
|---|
| Research Institution | Matsuyama University |
|---|
Principal Investigator |
根本 雅也 松山大学, 人文学部, 准教授 (00707383)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
| Keywords | 戦災 / 地域社会 / 伝承 / 心霊現象 / 超常現象 / 戦争体験の継承 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、体験者による証言や教育などとは異なる「戦争体験の継承」のあり方を探求するため、戦災にまつわる心霊・超常現象に着目する。そして、それらを掘り起こすとともに、戦災による死者と地域社会の関わりを探る。この目的を達成するため、本研究は、広島に投下された原爆の災禍と東京空襲という二つの戦災を事例として取り上げる。
令和4年度は、新型コロナ感染症の影響がいまだに残っていたこともあり、インタビュー調査等は十分に実施できなかった。一方、国内の往来は十分に可能となったことから、主に東京で関連資料の収集や現地での観察調査を実施した。
国立国会図書館等で行った資料調査では、前年度以上に、広島の原爆や東京の空襲を含めてアジア太平洋戦争にまつわる心霊体験談や怪談などを収集することができた。しかし、これらが掲載されている書籍や雑誌は「ホラー」や「ミステリー」のジャンルに含まれるものであった。このことは、戦争にまつわる心霊現象の体験談や民話などが「戦争体験の継承」という枠組みではこれまで捉えられてこなかったことを示すとともに、形はともかく、それらが実際には「戦争体験」を伝えてきたことを示唆している。また、こうした書籍や雑誌に記載されている体験談・怪談・民話は、時期的に変化していた。
令和4年度は、これまでの研究をもとに、原爆被爆者のトラウマや被爆者が体験を語る活動について再検討し、発表した。これらは、死者と体験者・地域社会の関係性を理解しようとする本研究に関わっている。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、「戦争体験の継承」のあり方を探求するため、東京と広島をフィールドとして、戦災にまつわる心霊・超常現象を掘り起こし、地域社会との関わりを探るものである。
令和4年度においては、調査を通じて一定の成果が得られた。国立国会図書館等において、東京の空襲や広島の原爆にかかわらず、アジア太平洋戦争にまつわる超常・心霊現象のエピソードを収集することができたからである。これらの逸話は、民話として収録されたものを除けば、「オカルト」「ミステリー」に分類される書籍や雑誌であることが多かった。そのため、これらが実際に地域社会の中で語り継がれているかどうかは不明であり、検証する必要がある。
現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした理由は、新型コロナウイルス感染症の流行により、令和2年度に大幅な遅れがあったことに加え、令和3年度も現地調査の機会が限られていたことが大きい。令和4年度においては改善されたものの、人と接する調査は十分に実施できなかった。
元々の研究計画では、戦災の超常・心霊現象と地域社会の関わりを探るつもりであった。しかし、それを行うには、資料調査に加えて、聞きとり調査が求められる。補助事業期間を延長した令和5年度は、現地調査の実施を通じて、地域社会と戦災の超常・心霊現象の関わりをより掘り下げていきたい。
|
| Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、（１）現地調査を実施するとともに、（２）これまでの調査研究をもとに成果をまとめていくことがある。
（１）については、広島や東京を訪れることにしたい。特に広島では、関連する場所を訪れ、周囲の観察や聞きとり調査を試みることにしたい。
（２）については、これまでに収集した資料などを整理・分析することで、戦災と超常・心霊現象の関わりや、それらと「戦争体験の継承」との関わりについて考察を深め、投稿論文等を執筆していく。
|
| Causes of Carryover |
次年度使用額があるのは、本研究課題が新型コロナ感染症の影響を受けたためである。令和５年度は、状況の改善が見込まれることから、残額多くは現地調査の実施に充てる予定である。
|
