2020 Fiscal Year Research-status Report
子どもは電子マネーをどう理解するか:超スマート社会での幼児・児童の生活実態の解明
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20K20796
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 崇 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20360878)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 子ども / 電子マネー / デジタルデバイス / アクターネットワークセオリー / 文化歴史的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は以下の2点を目的とする。①超スマート社会が実現しつつある現代の子どもによる多様なデジタルデバイスの利用経験とその理解の仕方について,その実態を明らかにする。②発達心理学や社会学・人類学の諸理論を再構築し,デジタルデバイスを媒介として子どもにもたらされる新たな能力や行為の可能性について議論するための概念枠組みを整備する。 そのために本研究では,①適応過程の見えやすい幼児・児童を対象として自然な日常生活の追跡撮影による自然観察を行い,各種デジタルデバイスとの接触の実態を分析する。②活動理論やアクターネットワーク理論などモノと人間の結びつきを重視する諸理論を,現代の子どもの生活実態が説明できるように再整備する。 令和2年度は採択初年度であり,実質的な調査は困難であると予想されていたため,調査準備に充てられる予定であった。実際に遂行されたのは,幼児・児童の日常生活に関する映像記録撮影のための機材(アクションカメラ,バッテリーなど)を購入し使用感を確認すること,および,調査協力者の確保であった。準備過程において,1人の児童を対象として諸々の機材の使用感の確認を行ったとともに,調査協力者を少なくとも1家族確保することができた。 また,課題採択前に,子どもが日常生活において周囲の大人と展開する相互行為やそこで行う諸活動を分析するための理論的枠組みを詳説した書籍が申請者によって上梓された。この書籍の内容に関する合評会が開催され,子どもの行為を動機や活動という観点から分析する上で必要な理論構築に向けた準備が進められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由により,おおむね順調に進展していると診断した。第一に,データを収集するための機材を確保できた。第二に,申請者所属機関による倫理審査を受け,承認された。第三に,2日間の追跡的観察に関して少なくとも1家庭からの協力を確約できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,調査者が幼児・児童の日常生活空間に入り,そこでの生活の様子を撮影することとしていた。しかしながら,COVID-19の国内での流行をふまえ,感染予防の観点から,対象児の家族に渡した機材を用いて保護者が対象児を撮影するという方法に切り替えることとした。なお,各自治体や教育機関の定める警戒レベルが対面接触を可能にする程度にまで下がった時点で,調査者自身による撮影に戻すこととする。 第二年目にあたる令和3年度は対象家庭を増やし,幼児・児童の日常におけるデジタルデバイスのバリエーションとそこでの利用実態をできるかぎり多様な状況において把握する。 また,デジタルデバイスと子どもの関係に関する国内外の文献を研究協力者と共に講読し,データ分析のための枠組みを整理する。
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