2020 Fiscal Year Research-status Report
末梢性生体反応を用いたストレスマネジメント効果発現メカニズムの検証
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20K20865
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
服巻 豊 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60372801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒山 竜太 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (30533468)
船橋 篤彦 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 講師 (40432281)
KABIR RUSSELLSARWAR 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 助教 (00881260)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 心理学的介入 / だ液サンプル / GABA / グルタメート / プレ・ポストデザイン / シングルケースデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には,新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け,心理学的介入を実施せず,ベースラインとしての基礎データ収集ならびに安定した測定系の構築を目標設定とした。まず,今後の臨床データ収集の準備として,だ液サンプル内における微量アミノ酸であるGABAならびにグルタメートの安定した測定系の確立を目指した。通常だ液サンプルは,採取直後にマイナス80度で保管し,アミノ酸の分解を抑える必要があるが,それは測定可能なアミノ酸量が大きいためであった。本研究では,脳脊髄液内の微量アミノ酸の測定技術を有するアークライスジャパンという企業とコラボレーションを行い,だ液サンプルでの微量アミノ酸測定を依頼した。その結果,通常の冷蔵庫の保冷温度であるマイナス20度保管のだ液サンプルにおいてもだ液の1000倍希釈によりGABAとグルタメートの測定が可能であることが明らかになった。次に,複数人のだ液サンプルによる基礎データを収集した結果,安定した測定は可能であったものの,個人データのバラツキが大きく,心理学的介入の評価系として採用するには困難があることが明らかになった。次年度に向けては,だ液サンプルのGABAならびにグルタメートが介入効果の評価系として確立を目指して,内的基準となるような他のアミノ酸などの生体微量物質の検索を行うこととした。さらに,これまで研究代表者が確立してきた心理学的介入評価としてのプレ・ポストデザインあるいはシングルケースデザインの方法を用いてだ液サンプル採取時に,心理状態ならびに気分状態を鋭敏に捉えるPOMS2などの心理検査を用いて,だ液データの変動との関連について検討し,生理指標ならびに心理指標を組み合わせて心理学的介入効果の評価系の確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響を受け,心理学的介入の研究計画は次年度以降(新型コロナウイルス感染症拡大状況に依存)に繰り越しとした。この機会に同時進行予定であっただ液サンプルの採取方法,サンプル保管方法の最適化ならびに測定方法の安定化を確立することができた。さらに,だ液サンプル内の微量生体物質であるGABAならびにグルタメートの測定は,対象者が異なることによる採取時間・日・個人差が大きいことが明らかとなり,内的基準となるパラメーターを同定し,その比率によって差の補正ならびに効果検証に益する評価系の確立を目指した研究に特化したものとなり,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,だ液サンプル内の微量生体物質をGABAならびにグルタメートのみならず,内的基準となるパラメーターの同定をすることで,個人差などの差の補正を可能としたい。また,GABAならびにグルタメート以外のアミノ酸も測定し,だ液サンプルの心理的変化の評価系として位置付けていくことを目指す。評価系が確立するとともに,健常な人への心理的介入を行い,その前後,あるいはシングルケースデザインとして少人数での効果検証の研究を展開し,生理指標ならびに心理指標を用いた新しい効果測定方法を確立する。同時に,臨床研究を計画し,最終年度には疼痛マネジメントとしての心理学的介入法である臨床動作法の実施前後ならびにシングルケースデザインとして臨床応用としての効果研究を計画する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け,国内・国外の学会開催が中止あるいはオンライン開催となった。そのため国内・国外への旅費の執行がなく,翌年度分として繰り越しすることとなった。また,心理学的介入研究としてプレ・ポストデザインによるデータ収集を予定していたが,感染予防のため実施を断念し,データ入力アルバイト雇用費等の支出もなくなった。だ液サンプルの測定についてはサンプル数が極端に少なくなったにもかかわらず順調に進めることができ,安定した測定方法が確立し,次のステップに進めることとなった。当該年度の未使用分は,翌年度分として請求した額とあわせて旅費ならびにだ液サンプル測定委託費として支出計画を再構築し,さらなる研究の進展に努めることが可能となった。
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