2020 Fiscal Year Research-status Report
Fusion of algebra, geometry and combinatorics based on the roots of Poincare polynomials of hyperplane arrangements
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20K20880
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 拓郎 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (50435971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼田 泰英 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (00455685)
鍛冶 静雄 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (00509656)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 超平面配置 / ポアンカレ多項式 / 整数根 / ランダム生成アルゴリズム / 機械学習 / 局所化と制限 / 対数的微分形式 / オイラー制限射 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である2020年度は、三次元超平面配置即ち平面配置のポアンカレ多項式が整数根のみを持つ例を多数構築し、以降の研究の基礎とすることを目指した。まず研究分担者である沼田泰英氏と信州大学で議論を行い、三次元配置をランダムに生成し、そのポアンカレ多項式を計算するアルゴリズムの基礎を構成することに成功した。沼田氏が現在そのアルゴリズムを実装し、多くの例を計算しているところである。しかしながら、コロナウイルスの流行が冬以降顕著になり、対面での打ち合わせが一度しかできなかったため、アルゴリズムの改良などに時間を要しており、当初の想定ほど多くの例の生成をするには至っていない。鍛冶静雄氏と行う機械学習を用いた、ポアンカレ多項式が分解する例の生成は、使用する理論の新しさもあり、現在にアルゴリズムを考案中であるが、2021年度には運用のめどが立ち、多くの例が得られるものと期待される。 他方、本年度は理論面での進展を得ることができた。超平面配置の研究における基本的な手法に、ある点を通る超平面を考える局所化と、ある超平面に制限して得られる超平面配置を考える制限がある。これらは代数や組み合わせ論において極めて有用な道具であったが、超平面配置の整数根がこれらの操作に対してどのようにふるまうかは未知であった。研究代表者はこの点を、対数的ベクトル場のオイラー制限射の全射性と組み合わせることで、自由性とも絡めて研究し、整数根と制限、局所化との関係を見出すことに成功した。本成果をさらに深めることで、自由性という条件を付けながらではあるが、これまで謎が多かった根の挙動が解明され、局所化や制限といった有用な操作を、整数根研究に生かせるようになることが期待される。本成果の内容は、現在論文への取りまとめを実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始時点で想定していたより、例の生成が遅れたため、やや遅れていると判定した。これはコロナウイルスの流行により、古典的ながら、だからこそ実装が早いと考えていたランダム生成アルゴリズム及びその実装を、沼田氏とじっくり議論する時間が取れなかったことが大きい。機械学習を用いる方法もその新規性から想定より解析に時間がかかり、アルゴリズム実装には至っていない。しかしながら、理論的な側面で進展が得られたこともあり、遅れはそこまで深刻ではない、と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の遅れを取り戻すため、二年目である2021年度はまずランダム生成アルゴリズムの実装に注力する。コロナウイルスの流行が収まれば、沼田氏と集中的に対面での議論を行い、アルゴリズムを実装し多数の例を生成したい。もし対面での打ち合わせが難しい場合には、遠隔での研究体制を整え、そちらへ移行する。機械学習を用いるパートは、鍛冶氏とともにアルゴリズムの基礎を構築することを目標とする。同時に、機械学習は実装できれば極めて強力な手段であるため、それらから逆に、整数根を持つ配置の特徴を見出させる、といった発展的な構想も持っている。 理論面は、一定の進展が得られているので、この方針を進めて、寺尾の分解定理の代数的・圏論的ではない証明を探索する。そのために研究代表者が着目しているのが、Silvotti氏による寺尾の分解定理の証明である。Silvotti氏の証明は代数幾何の爆発と呼ばれる手法で特異点を解消し、なめらかになったところで容易となるベッチ数と直線束の次数を比較することで実施されている。これを直線束ではない別の指標と比べることで、代数を経ない、位相幾何的な寺尾の分解定理の証明を目指す。 コロナウイルスの流行状況は見通すことが難しいが、年度後半になって状況が落ち着いてきたら、本研究成果を国内外で発信することに旅費を使用し、様々なフィードバックを得ることで研究をさらに推進したい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの流行により、初年度予定していた研究打ち合わせなどがほとんどできなくなったため、大幅に旅費を繰り越すこととなった。本年度以降、コロナウイルスの流行状況を鑑みながら、情報収集、打ち合わせ、成果発表のために国内外の旅費として使用することを考えている。
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