2022 Fiscal Year Research-status Report
Xe原子EDM測定に向けた電極素材表面における131Xeスピン緩和機構の解明
Project/Area Number |
20K20928
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
市川 雄一 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20532089)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 基本対称性 / CPの破れ / EDM / 核スピン / 偏極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、標準理論を超える新現象である電気双極子モーメント(EDM)の探索に向けて、Xe原子の電極素材表面におけるスピン緩和機構の解明を行う。EDMは標準理論を超えるCPの破れに感度のある観測量であり、現在、Xe原子を対象としたEDM探索のために、129Xeと131Xeの異核種同位体を用いた核スピンメーザー法を開発している。これまでに核スピンメーザーの同時発振に成功しており、本測定法を用いたEDM探索を行うためには、電場印加条件でのメーザー発振の実現が必要である。ところが電極素材表面での131Xeのスピン緩和機構はこれまでの全く調べられていない。そこで、本研究では、様々な電極素材表面での131Xeのスピンの縦緩和時間および横緩和時間を測定して、その緩和機構を理解し、高い131Xeスピン偏極度および長い131Xeスピン緩和時間の実現を狙う。 本年度は理化学研究所から九州大学に移設した実験装置に関する構築および開発を行った。断熱高速通貨型NMR測定装置に関しては、129Xeおよび131Xeガスを封入したガラスセルを用いてスピン交換光学ポンピング法によって偏極を生成し、その偏極を示すNMR信号を取得することに成功した。得られたデータから縦緩和時間およびガラスセル表面における壁緩和を評価した。また、横緩和時間測定のためのパルスNMR装置の構築を行った。129Xeおよんび131Xeガスを封入したガラスセルを用いて、パルスNMR法による自由誘導減衰信号の取得に成功し、横緩和時間の評価を行った。 今後、様々な電極付きのガラスセルを作成し、それらの縦緩和時間と横緩和時間の測定を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響で当初の予定よりは実験装置の移設が1年遅れたものの、その後は断熱高速通過型NMR装置、パルスNMR装置とも順調に構築し、それぞれの信号を得ることに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、様々な電極付きのガラスセルを作成し、それらの縦緩和時間と横緩和時間の測定を行っていく予定である。これらの測定を通じて、電極表面でのスピン緩和機構を理解し、高い131Xeスピン偏極度および長い131Xeスピン緩和時間の実現を狙う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で当初の予定より実験装置の移設が1年遅れ、それに伴い全体的な研究計画も1年ずつ後ろ倒しになっているため。電極付きのセル製作および測定装置の開発を次年度に行う予定である。
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Research Products
(12 results)