2020 Fiscal Year Research-status Report
マントルかんらん岩の絶対年代測定:カンラン石のニュートリノ年代測定法の開発
Project/Area Number |
20K20944
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 丈典 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (90293688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中 竜大 東邦大学, 理学部, 講師 (00608888)
伊神 洋平 京都大学, 理学研究科, 助教 (30816020)
小坂 由紀子 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 研究機関研究員 (90847360)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | カンラン石 / 年代測定 / ウラン / ICP-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
マントルの年代、特にリソスフェアを構成する上部マントルの形成年代は、プレート運動と駆動機構の時間変化や、地殻―マントル間での物質移動を理解する上でも必要不可欠な情報である。しかし、これまで行われている年代測定では「かんらん岩の形成年代」を正確に求めるには至っていなかった。そこで、素粒子、特にニュートリノとカンラン石の相互作用に着目し、飛跡の長さと密度から相互作用継続時間を求め、カンラン石の形成年代を試みることとした。 カンラン石にウランなどの放射性物質が含まれている場合、その影響による飛跡がノイズになる可能性が考えられた。特に、ウランは自発核分裂を起こすため、中性子や核分裂生成物により大きな飛跡が生じる可能性がある。また、宇宙線との相互作用による飛跡もノイズになる可能性がある。そこで、宇宙線が水に遮られる海洋底から採取されたカンラン石を用い、ICP-MSによりウラン濃度を測定した。その結果、ウランの濃度は最も低いもので400ppb程度であることが明らかになった。これは、理論的研究で仮定している100ppbと同程度の濃度である。したがって、マントル由来のカンラン石にはウラン濃度の十分低いものがあると言える。 飛跡の観察方法を検討するため、イオン照射実験を実施した。200keVの酸素イオンをカンラン石に照射し、エッチングによる方法と透過電子顕微鏡による観察を試みた。エッチングでは明瞭な飛跡を観察することができなかった。また、透過電子顕微鏡観察でも飛跡は観察されなかった。透過電子顕微鏡観察により研磨により生じた転位が表面100nmから1μm程度までの領域に生じていることが明らかになった。この研磨痕がなんらかの理由によりイオンビームによる飛跡形成を妨げていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
飛跡の観察法開発で他の条件でのイオン照射やα線の照射実験を行った試料を用いる計画であった。しかし、新型コロナウィルスの影響により首都圏と名古屋地区の移動が行いにくい期間が長く、代表者と分担者との間で日程調整がうまくできなかった。そのため、照射を1回行っただけで、イオンビームの強度やエネルギーを変えた実験や、α線の照射実験が行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究分担者によりα線源を取得し、試料の送付のみでさまざまな条件の照射実験を行えるようにする。そして、エッチング法の開発をすすめるとともに、透過電子顕微鏡による観察も行う。飛跡が観察できなかった理由として表面の研磨痕の影響が考えられるため、ケミカルエッチングやプラズマエッチングにより機械研磨により生じた研磨痕を除去することを試みる。これにより、研磨痕の影響のない状態で飛跡が生じるかどうか、どのように観察すればよいか検証可能になり、カンラン石に生じた飛跡の観察法が確立するはずである。 カンラン石に加え、海洋底から採取された蛇紋石が使えないか検討する。これは、蛇紋石には水酸基が含まれているため、中性子の減速材として作用することが期待できるため、ウラン濃度がカンラン石と同程度であっても検出感度が高くなると予測されるからである。
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Causes of Carryover |
1回目の緊急事態宣言により新型コロナウィルスによる影響は収束に向かうものと予想していた。また、韓国のビジネストラック制度など、海外出張の制限も緩和に向かうものと予想していた。しかし、日本国内の感染状況は収束に向かう状況ではなく、第2波、第3波と続いた。その結果、海外での分析が不可能になったことのみでなく、日本国内での出張も制限された。これにより極微量元素の分析が限定的になるとともに、イオン照射実験が1回しか行えなかった。以上の事由により、次年度使用額が生じた。 2021年度には、別途取得したα線源を用いて照射実験が可能になるため、粒子のエネルギーを変えることはできないものの試料の送付のみで照射量を変えた実験を行う。α線を照射した試料を用いた各種実験に次年度使用額を用いる。また、海外で予定していた極微量元素の分析は、新型コロナウィルス感染症の状況に応じ、海外での分析と国内分析業者への委託で対応することにし、次年度使用額によりその経費を賄う。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] The formation process of calsitic skeleton of deep-sea isidid octocorals inferred from crystal orientation2020
Author(s)
Kozaka, Y., Kato, T., Michibayashi, K., Kouketsu, Y., Tokuda, Y., Sato, H. and Ikehara, M.
Organizer
The 11th Symposium on Polar Science
Int'l Joint Research