2021 Fiscal Year Research-status Report
マントルかんらん岩の絶対年代測定:カンラン石のニュートリノ年代測定法の開発
Project/Area Number |
20K20944
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 丈典 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (90293688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中 竜大 東邦大学, 理学部, 講師 (00608888)
伊神 洋平 京都大学, 理学研究科, 助教 (30816020)
小坂 由紀子 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任助教 (90847360) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | カンラン石 / 年代測定 / 飛跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、マントル物質とニュートリノなどの素粒子の相互作用を用い、その年代を明らかにすることを目的としている。そして、相互作用の検出のため、素粒子による飛跡を読み取ることを試みている。今年度は、飛跡の読み取り方法について検討を行った。また、年代との相関をえるための基礎的な実験を行った。 前年度の実験により、表面状態により飛跡の観察が不可能になることが明らかになっていた。特に、機械研磨による研磨痕が結晶構造を破壊し、素粒子の飛跡を消してしまうことが明らかになっている。そこで、コロイダルシリカにより表面を処理したカンラン石試料を用いてイオン照射実験を行た。その結果、照射したイオンにより生じたと思われる転移が観察された。このことから、表面観察により飛跡を読み取るためには、コロイダルシリカ処理など表面損傷を生じさせない手法で観察面を作成する必要があることが明らかになった。今後は、コロイダルシリカ処理で観察面を作成する場合、十分な体積の読み取りを行うために必要な回数や時間の見積もりを行い、現実的な手法かどうか検討する。 多くの文献で素粒子が鉱物に作る飛跡は漠然と「フィッショントラックのような」と表現されている。しかし、どのような素粒子がどのような形状の飛跡を生じさせるかは明確ではない。粒子の運動エネルギーに着目したところ、電子的阻止能が支配的な場合と核的阻止能が支配的な場合で光学顕微鏡で観察される形状が異なる可能性が示唆された。照射実験で用いたカンラン石の反射顕微鏡観察では明確な結論が出せなかったため、今後は他の鉱物を用いて透過照明による観察を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス渦の影響が想定以上に長引き、スクリーニング手法の開発に必要な韓国での実験が実施できていない。そのため、天然試料をそのままの状態で観察するのに適した試料の選定に支障が生じている。素粒子を模したイオンの照射により実験をすすめているが、実際の素粒子との関係を明らかにするには至っていない。また、カンラン石の晶癖から保持方法が制限され、表面処理の手法や観察方法が制限されている。このことにより、効率的な読み取り方法の開発が遅れている。また、使用する分析装置が故障したが、部品が納期未定で入手できず、完全には修理しきれていない状態で研究を進めているため効率が低下している。同様の理由で、装置の改良に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
飛跡の形状、特に電子的阻止能が支配的な場合と核的阻止能が支配的な場合の違いについて、光学顕微鏡による読み取りで自動判別可能かどうかという視点で検討する。カンラン石試料では観察手法に制約があるので、他の鉱物を用い、透過光と反射光の両方について検討する。特に、透過光観察が使えると表面処理の時間を節約できるため、効率よく課題を遂行できると予想される。 新型コロナウイルス禍の状況が変わり次第、その時の状況に応じて韓国での実験を進める予定である。また、分析装置の部品の供給体制が徐々に改善していることから、入手でき次第不具合箇所の原状回復及び改良を行い表面観察法の開発と原理実証を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス禍の長期化により大韓民国での実験が不可能となった。そのため、外国旅費が執行されていない。また、課題遂行に必要となる装置の故障対応及び改良を実施しようとしたころ、必要な部品の納期が想定以上に長く年度内に取得することが径なかったため。 新型コロナ禍の状況が変化した場合、状況に応じて大韓民国での実験に使用する。また、部品の供給状況が好転した場合は、不具合対応及び装置の改良を実施する。また、透過照明による画像取得ならびに画像処理により研究が進展する可能性があり、そのために必要な電子計算機の取得も検討する。
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Research Products
(8 results)