2020 Fiscal Year Research-status Report
Laser-driven shock compression experiments for time-evolution analysis of impact-induced melting process
Project/Area Number |
20K20947
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥地 拓生 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (40303599)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 悠平 岡山大学, 惑星物質研究所, 特任助教 (90815705)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 衝突融解現象 / 高強度レーザー / X線自由電子レーザー / カンラン石 |
Outline of Annual Research Achievements |
46億年の昔、原始の太陽をとりまく星雲の中で、無数の小天体が衝突と合体を繰り返すことで惑星や衛星、小惑星が成長した。そこでは強い圧縮を伴う加熱や、摩擦変形に起因する発熱が起こり、その過程が惑星構成物質の状態に多大な影響を与えた。特に衝突時に発生した融解の現象は、隕石のショックベインなどの特徴的な組織の生成や、コンドリュールのもとになったマグマのしぶき、特異な高密度鉱物などの生成の原因となった。本研究課題では、この衝突融解の現象を、高強度レーザーとX線自由電子レーザー、光学計測を組合せた実験によって再現することを通して、初期太陽系の物質進化の歴史の重要な部分を復元する。惑星構成物質の主役の一つであるカンラン石を中心に、含水鉱物なども含めた物質を瞬間的に衝撃圧縮して融解させた上で、その後の時間進展を圧縮状態その場において調べてゆく。 初年度は、高強度レーザーを使って試料を圧縮して融解させる条件の探索のために、理化学研究所播磨事業所のSACLA施設における系統的なX線その場観察実験を実施した。これに加えて、大阪大学レーザー科学研究所に設置された高強度レーザーと光学計測装置を用いた、蛇紋石などの含水鉱物の衝突融解その場観察実験を実施した。衝撃波によって圧縮された物質は、どのように衝撃波が作られたかによらず、ランキン・ユゴニオの関係式で統一的に熱力学的な状態を記述される(ユゴニオ状態)。上記のX線その場観察と光学計測の実験の一部においても、試料がナノ秒の超高速時間スケールで融解する過程の熱力学的状態を計測することに成功した。このユゴニオ状態の決定によって、X線回折パターンの解釈のために必須の、物質の密度を得ることもできた。以上の計測が実現できたことにより、課題の目的の達成のために必要な実績が順調に得られていると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝突融解現象を引き起こした試料が膨張、飛散して失われる前に、X線自由電子レーザーの高強度フェムト秒パルスを照射して、シングルショットのX線回折による状態解析を行うことに成功している。この手法で、圧縮された結晶の融解が起こる過程の時間進展を捉えている。同一形状で準備した多数の試料を用い、X線の照射タイミングを系統的にずらしてゆく実験によって、ナノ秒以下の時間分解能の構造時間進展のデータが得られている。さらに、試料の熱力学状態の変化を決定するための、レーザードップラー速度干渉計および輝度温度計による時間分解光学計測データも順調に取得できた。以上の計測が実現できたことにより、課題の目的の達成のために必要な実績が、おおむね順調に得られていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はSACLAに設置されている高強度レーザーを、これまでの実験条件よりもさらに強く集光することにより、強い衝撃圧縮状態を作り出して、融解曲線付近から遠く離れた超高温超高圧の状態を計測してゆきたい。その結果を融解曲線付近の結果と比較することで、衝突の強さによるシリケイトメルトの状態の違いを捉えてゆきたい。 これに加えて、圧縮されたシリケイトメルトの急速な構造緩和、その部分的な結晶化、結晶化部分の構造相転移などの、ナノ秒時間スケールの超高速構造変化の研究も進めてゆきたい。このような急速な過程が既に予察的に捉えられているが、それは生成直後の非平衡な構造を持つシリケイトメルトが、より熱力学的な平衡の状態に近づく際の変化を反映している可能性が高い。このような急速な状態の変化がどのような化学組成の物質で、どのような圧縮条件で起こるのかを調べて、その惑星物質進化における意義を明らかにしてゆきたい。
|
Causes of Carryover |
(理由)2021年度の実験の実施のために必要な物品や装置の購入について、その一部を次年度に入ってから行うことに変更したため。
(使用計画)これまでの実験の結果から得られた知見をもとに、十分な実験条件の検討を行った上で、次年度の実験の実施のために必要な試料、物品の購入や加工等の作業を進める。特に試料の形状や数量、保持機構などに対して十分な検討と改良を行うことで、研究目的の達成に対して最適な準備を進める。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Liquid Structure of Tantalum under Internal Negative Pressure2021
Author(s)
K. Katagiri, N. Ozaki, S. Ohmura, B. Albertazzi, Y. Hironaka, Y. Inubushi, K. Ishida, M. Koenig, K. Miyanishi, H. Nakamura, M. Nishikino, T. Okuchi, T. Sato, Y. Seto, K.Shigemori, K. Sueda, Y. Tange, T. Togashi, Y. Umeda, M. Yabashi, T. Yabuuchi, and R. Kodama
-
Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 126
Pages: 175503
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-