2020 Fiscal Year Research-status Report
磁気アルキメデス法による海中マイクロプラスチック回収装置の概念設計
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20K20989
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野口 聡 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (30314735)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 磁気分離 / マイクロプラスティック / 超高磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高磁場を利用した海水からのマイクロプラスチック分離装置の実現検証研究を行っている。マイクロプラスチックは、負の磁化率を持つため、磁場から遠ざかる力が働く。特に、高磁場かつ高磁場勾配の時に大きな力が働く。近年、30テスラ超の超高磁場マグネットが開発できるようになってきたことから、超高磁場を利用した海水からのマイクロプラスチック分離装置を検討している。海洋環境に改善のために大変意義深い研究である。 初年度は、主に流体シミュレーション・ツールの開発に従事した。それまで、有限要素法による流体シミュレーションを実施してきたが、マイクロプラスチックを的確に表現できないことを知見として得ていた。また、次年度以降の電磁界シミュレーションとの連成を考え、新たに粒子用による流体シミュレーション・ツールを開発した。 開発した流体シミュレーション・ツールを使い、マイクロプラスチック磁気分離装置の初期検討を実施した。磁場勾配を6.66 T/mと仮定し、最高磁場10 T, 20 T, 30 Tの時のマイクロプラスチック磁気分離能力を比較した。その結果、最高磁場10 Tの時よりも、最高磁場30 Tの時の方が、2倍以上の分離能力があることが示せた。また、毎秒24リットルと格段に処理速度が早いことも確認した。広大な海から、マイクロプラスチックを分離・回収するためには、回収率もさることながら、処理速度が大きな意味を持つ。また、装置の全長も約1.5メートルと大変コンパクトである。 さらに、マイクロプラスチック分離装置用の超高磁場マグネットとしては、超高磁場を発生できる第二世代高温超伝導を利用することにしている。初年度後半から、第二世代高温超伝導マグネットの安定化技術について検討を始めた。種々ある安定化技術(無絶縁巻線技術、導電性エポキシ含浸技術など)を体系的にまとめ、本研究に必要な安定化技術の検討を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画当初は、粒子法による流体シミュレーション・ツールを開発し、マイクロプラスチック分離能力について検討することにしていた。 すでに、粒子法による流体シミュレーション・ツールを開発が終わっており、予定通りである。また、流体速度や磁場の強さなどをパラメータとし、マイクロプラスチック分離能力について検討が終わった。次年度も、引き続きパラメータ・サーベイを実施する予定であるが、順調に進んでいる。 そして、3年目から実施する予定であったマグネットの最適形状設計について、先行研究として必要なマグネット安定化技術について体系化を初年度に実施した。 従って、流体シミュレーション・ツール開発、パラメータ・サーベイは計画通りに進み、マグネット検討について前倒しで始められたことから、「当初の計画以上に進展している」と判断した。 一方で、コロナ禍のため、学会発表などで予定通りに実施できなかった部分もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、概ね当初計画通りに進めていく予定である。 2021年度は、まず、分離能力の向上や装置の小型化などを主な検討点として、マイクロプラスチック分離装置の実用化へ向けた研究を推進していく。初年度の基礎検討では、超高磁場が有利であることだけを確認したので、本格的なパラメータ・サーベイを実施することになる。このパラメータ・サーベイが3年目(最終年度)における超高磁場マグネットの設計制約となることから、2年目に調査するパラメータをより精査することが必要となる。 また、3年目(最終年度)から実施予定であった超伝導マグネットの検討だが、すでに初年度から一部検討に入っている。引き続き、2021年度も実施する。特に、研究当初には計画していなかったが、二つのマグネット間で大きな力が発生する可能性があるので、マグネット間力についての検討を実施する。これが、磁場勾配の能力を決めることになるので、大変重要な検討となる。 研究計画当初は、国内外の学会で積極的に成果を報告する予定であった、コロナ禍のため今後も予定通りに行かない可能性が高い。しかし、状況をよく確認しながら、オンラインでの学会も含めて積極的に学会発表を実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に、学会発表や研究調査の旅費および学会参加費を計上していた。しかし、コロナ禍で学会が中止になったり、オンライ開催となっため、計画していた出張が取りやめとなった。従って、次年度使用額が発生した。 次年度の使用計画としては、研究計画当初は予定していなかったシミュレーションによる検討事項(コイル間力など)が増えたことから、計画当初には予定していなかったワークステーションを購入(備品費)する。すなわち、研究計画当初は、2021年度は設備備品費を設けていなかったが、ワークステーション分を計上する。また、発表を取りやめた内容を積極的に、現地開催、オンライン開催を問わず発表し、旅費および学会参加費として次年度の残額の一部と計画当初の予算を執行していく予定である。
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Research Products
(2 results)