2021 Fiscal Year Research-status Report
磁気アルキメデス法による海中マイクロプラスチック回収装置の概念設計
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20K20989
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野口 聡 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (30314735)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 磁気分離 / マイクロプラスチック / 超高磁場応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高磁場を利用した海水からのマイクロプラスチック回収装置の提案および実現検証研究を行なっている。マイクロプラスチックは、負の磁化率を有することから、高磁場勾配を持つ、超高磁場中では海水とことなる挙動をすることを初年度の研究成果から明らかにしてきた。具体的には、30テスラ程度の超高磁場と、6.66テスラ/メートルの高磁場勾配が必要であり、長さも1.5メートルを要することが明らかになった。しかし、実際にはそのような長さを有する上記の空間を作り出すことは難しく、研究2年目は、第2世代高温超伝導マグネットの簡易設計を行ない、以下の問題に取り組んだ:(1)第2世代高温超伝導マグネットの安定性および保護方法(2)第2世代高温超伝導マグネットに働く応力による超伝導特性の低下。 (1)第2世代高温超伝導マグネットの安定性向上および保護技術法として、無絶縁(NI)巻線技術があるが、近年、その派生技術がいくつか提案されている。本マイクロプラスチック回収装置に有効なNI派生技術を検討するにあたり、NI派生技術(NI技術、メタル絶縁巻線技術、導電性エポキシ含浸技術など)の体系的にまとめた。その結果、無絶縁巻線技術が小型マグネットには有効であるが、本マイクロプラスチック回収装置のような大型マグネットには、メタル絶縁巻線技術の方が強度的にも優位であることが明らかになった。 (2)第2世代高温超伝導線材は、その製造上、幅広で薄いテープ形状をしている。そのため、遮蔽電流が大きく誘導され、かつ大きな応力差が生じる。そして、テープが捩れるような現象が起きることが指摘され始めている。最近、その応力シミュレーションが行われ始めているが、まだ電磁現象との完全な連成および塑性領域までの考慮が行われていない。そこで、逸早く粒子法による塑性領域までを考慮した電磁現象との連成手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の基礎検討では、粒子法による流体解析コードを作成し、マイクロプラスチック分離に超高磁場が有利であることを確認した。そして、本年度(2年目)は、計画を若干前倒しして、本格的なパラメータ・サーベイ(3年目に実施予定であった)を実施することを予定していた。 しかし、いくつかのサーベイから、安定性・保護技術の再検討、マグネット内応力による超伝導特性の低下を検討することが必要であることが明らかになった。そこで、当初計画にはなかったが、これらの検討を実施した。そのため、本格的なパラメータ・サーベイは当初計画どおり3年目(最終年度)に実施することになった。当初計画には無かった研究検討項目を実施ししたため、今後は当初計画通りの実施となる予定であり、「おおむね順調に進展している」という判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、2年目までに検討してきた流体解析による必要な磁場スペックと、マグネットの安定性・保護ならびに応力による超伝導特性の低下を考慮に入れ、第2世代高温超伝導マグネットのパラメータ・サーベイおよび概念設計を行う。これまでの、検討から、大口径が必要なこと、高磁場勾配による大きな電磁力が働くことが明らかになっている。研究計画当初は、円形コイルを想定していたが、1メーター超の長さを容易にかつ超伝導線材量を最少にするためにもレーストラック形状も追加して検討する。これまで、レーストラック形状の遮蔽電流分布や、その電流分布による応力も検討された事例がないため、新たに検討することにする。さらには、高磁場勾配発生のためのレーストラック形状超伝導マグネットの設計事例もないため、詳細な検討が必要となる。さらに、前述したコイル間の電磁力なども評価項目として検討していく。これまでに無い超伝導マグネットのスペックであるため、問題の洗い出しを含めて、慎重に検討していく。最終的には、海水からのマイクロプラスチック回収装置の実現性を示して研究を結実する。 研究計画当初は、国内外の学会で積極的に成果を報告する予定であった、コロナ禍のため今後も予定通りに行かない可能性が高い。しかし、状況をよく確認しながら、オンラインでの学会も含めて積極的に学会発表を実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度およびその前年度に、学会発表や研究調査の旅費および学会参加費を計上していた。しかし、コロナ禍で学会が中止になったり、オンライ開催となっため、計画していた 出張が取りやめとなった。従って、次年度使用額が発生した。 2022年度は、発表を取りやめた内容を積極的に、現地開催、オンライン開催を問わず発表し、旅費および学会参加費として次年度の残額の一部と計画当初の予算を執行していく予定である。
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Research Products
(7 results)