2023 Fiscal Year Research-status Report
A study on disaster case management methods to reduce the number of people who have difficulty in rebuilding their lives after a major disaster
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20K21059
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
上月 康則 徳島大学, 環境防災研究センター, 教授 (60225373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮定 章 和歌山大学, 災害科学・レジリエンス共創センター, 特任准教授 (00836851)
井若 和久 徳島大学, 人と地域共創センター, 学術研究員 (50795060)
松重 摩耶 徳島大学, 環境防災研究センター, 助教 (70845205)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Keywords | 災害ケースマネジメント / 東日本大震災 / 被災者支援 / 困窮過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
R5年度は,東日本大震災発災後における在宅被災者の生活困窮課題の因果関係を整理・見える化し,被災者支援の在り方にについて考察を加えた.データは,東日本大震災発災後,在宅被災者を支援してきた団体の一つである一般社団法人チーム王冠が東日本大震災から4年を経た2015年11月より仙台弁護士会と宮城県の沿岸市町を対象に「在宅被災者等戸別訪問型法律相談」を実施したアセスメントシートを用いた. その結果,課題項目数は44個あり,1世帯あたり最大で12個,平均5個の課題を抱えていた.課題を「支援」「家屋」「情報」「精神・意欲・不満(精神課題)」「経済・生業」「復興計画」「交流」「体調・怪我」「その他」に大別すると,最も多かった区分は「精神課題」で「うつ」「生きる気力をなくす」「行政不信」等の課題があった.また時間の経過につれて,行政や地域の課題からコミュニティや精神,健康上の問題など個々の被災者への対応が必要な課題へとつながっていく様子がうかがえた.長期間困窮するような被災者を生まないためには,起点となるような“上流側”での支援が重要であることが本検討からもわかった. 課題を結ぶ因果関係の矢印の数は121本ありこの矢印の種類ごとの事例数を合計すると因果関係の総数は734件あった.最も多かった因果関係は①「支援格差」から「不満」,②「支援制度を受けられない」から「家屋修理未完了」の13個であった.具体例として,①では「在宅被災者には物資や情報などの支援がなく,仮設住宅の被災者との間に支援格差の不満を感じた」ということや,②には「震災により人間関係が壊れ,正常な判断ができなかったために支援制度を受けられず,家屋修理も未完了のままである」といった事例があった. これに対して,被災者支援団体情報提供やコミュニティづくり,専門家の支援につなげるなど個別に様々な支援を行い,被災者の困窮度を和らげていたことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)支援団体「チーム王冠」に提供されたアセスメントシートのうち,未解析の70事例を詳細に解析し,未災地の徳島に活かす教訓としてまとめる.特に,地震のみの被害者と連続被災を受けた被災者との困窮の過程や程度に着目すること,他の災害事例との比較を行い,調査研究を進めること.本課題については,解析を終えており,一部学会で口頭発表を行う予定である.さらにR6年度には査読付き論文に投稿する計画にしている. (2)教訓を周知するためのアウトリーチ活動を行う.具体的には,訓練やゲームなどの啓発プログラムの開発を行う. 「よりよい復興」を成し遂げた事例を四国の災害の中から,計7事例を抽出し,カルタにすることができた.その後,小学校や四国内の防災フェスタへの来場者にカルタ遊んでもらい,参加者は復興への関心を高めたことを確認することができた.この成果は,R6年度の防災教育学会で発表する予定である. (3)4年間の研究成果をまとめ,学会に報告する. R5年度は6件の学会での口頭発表を行ったが,査読付き論文にまとめることができていない. 以上のことから,(1)(2)は概ね順調で,(3)は遅れており,総合的には「おおむね順調」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度のR6年度に行う研究内容は次の3点である. (1)本研究成果と能登半島地震での事例を比較検討し,被災者の困窮過程と支援方法に関する一般化をはかる. (2)教訓を周知するためのアウトリーチ活動を行う.具体的には,訓練やゲームなどの啓発プログラムの開発を行い,広く配布する. (3)5年間の研究成果をまとめ,学会誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
R6年の1月にアセスメントが実施された石巻市を訪ね,その後の当時の被災者にヒアリングをして,その結果を論文にまとめる予定であった.そのために研究費から旅費を残していたが,令和6年度能登半島地震が発生し,その調査を行うことができなくなった.なお,令和6年度には,繰り越しとなった研究費を使い,未着手であった内容と能登半島地震での被災者の状況を比較し,研究成果をまとめる予定である.
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Research Products
(6 results)