2021 Fiscal Year Research-status Report
有機半導体レーザーの実用化に向けたレーザー色素の分子設計指針の確立
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20K21227
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
儘田 正史 九州大学, 工学研究院, 助教 (60625854)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 有機半導体レーザー / レーザー色素 / エレクトロルミネッセンス / 有機発光ダイオード |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体レーザー(OSL)は、ポスト有機ELとして様々な応用が期待されるが、現時点では材料およびデバイスの両面において多くの課題が残る。有機レーザー色素の高性能化のための新規材料創出やデバイスの構造最適化を通して有機レーザーの学理を深化させることを目的とした。これまでに電流励起でのレーザー発振に成功している有機デバイスは、有機ELと同様のダイオード構造をもつ有機半導体レーザーダイオード(OSLD)であるが、その他にも、トランジスタ構造によってレーザー発振を実現できる可能性がある。さらに、フォトンレーザーのみならず、光共振器中の共振モードと有機分子の励起状態が強結合した励起子ポラリトンが室温でBose Einstein 凝縮(BEC)相へ転移したポラリトンレーザー応用も近年注目されている。本年度は、新規材料開発とともに、トランジスタおよびポラリトンレーザーデバイスに向けた開発を行い、これらの可能性を探った。 OSLDに用いられたレーザー色素とほぼ同等の性能を有する可溶性材料を用い、DBRで挟み込んだ有機マイクロ共振器を作製し、ポラリトンの検出を行った。その結果、これまで報告されている多くの有機材料系よりも大幅に低いしきい値9.7 microJ/cm^2でBEC状態の観測に成功した。トランジスタ構造に向けては、結晶性の新規レーザー材料の創出とデバイス作製を行った。分子構造と光学特性の相関を結晶構造解析によって明確にし、7.2 microJ/cm^2の低いしきい値で自然放射増幅光(ASE)を観測した。トランジスタは、高移動度の両極性輸送を示し、電流励起発振に向けた基礎特性向上を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
可溶性レーザー材料を用いて世界最高水準の低しきい値でポラリトンBECの観測に成功しており、ポラリトンの緩和速度がしきい値低減に向けて重要なパラメータであることを明らかにするなど、今後の開発の指標も得た。また、Q値にはさらなる改善の余地があり、フォトンレーザーに匹敵する低しきい値の可能性も示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに唯一報告されているりん光レーザーで用いられた化合物に類似するボロン誘導体について、室温りん光を否定する報告がなされ、りん光レーザーの報告例についても疑義が生じた。このことから、室温りん光の解析は注意深く行う必要があると同時に、全く異なる分子システムを含めた検討を行う。三重項励起状態吸収によるロスが小さい室温りん光材料の開発を進めており、レーザー発振に向けたさらなる開発を進める。
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Research Products
(12 results)