2020 Fiscal Year Research-status Report
脳深部錐体細胞の反応特異性を決定する樹状突起スパイン活動の機能イメージング
Project/Area Number |
20K21561
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 正晃 北海道大学, 医学研究院, 講師 (90518325)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 二光子レーザー顕微鏡 / カルシウムイメージング / 樹状突起スパイン |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶の形成に重要な役割を果たす海馬の錐体細胞は、動物の場所に特異的に活動する場所細胞としての性質をもつが、このような細胞反応の場所特異性がどのようなシナプス活動によって形成されるのかは明らかでない。この問題を明らかにするための技術的課題を克服するために、本研究は、深部脳の錐体細胞の樹状突起スパインレベルのカルシウムイメージングの手法を確立することを目標としている。本年度は、海馬錐体細胞の樹状突起スパインの標識方法について検討した。まずスパインに優先的に局在するカルシウムセンサータンパク質を神経細胞特異的なプロモーター下に発現するトランスジェニックマウスを用いて実験を行った。このマウスの脳にイメージングウインドウを埋め込み、海馬の錐体細胞を二光子レーザー顕微鏡でイメージングしたところ、stratum oriens層の樹状突起の1本1本を明確に分離して観察することが難しかった。固定した脳を摘出し切片を作成して蛍光顕微鏡で確認したところ、これは標識される細胞の密度が高すぎることが原因であると考えられた。そこで標識細胞の密度を下げるために、このカルシウムセンサータンパク質を発現するためのウイルスベクターを作成して海馬に注入し、二光子レーザー顕微鏡で観察したところ、より少ない数の細胞が標識されているのが確認できた。標識された細胞の樹状突起の領域を拡大してイメージングすると、スパインが存在すると考えられる箇所により強い点状の蛍光シグナルが観察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海馬CA1錐体細胞の樹状突起スパイン活動のイメージングに必須の条件である適切な密度での細胞標識に関して有望な結果が得られた。しかし、顕微鏡を高解像度・高速スキャン化するための改良については当初の計画に比べて進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は行動中のマウスのイメージングを行い、ナビゲーション行動中の樹状突起スパイン活動のイメージングを目指す。またスパイン活動をより鮮明にイメージングし、スキャン速度を高速化するための顕微鏡光学系の改良を行う。
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Causes of Carryover |
今年度に顕微鏡システムを改良するための支出を予定していたが、錐体細胞の樹状突起スパインの標識の検討を優先して進めたために次年度使用額として繰り越した。この分は次年度に当初の使途通り使用する予定である。
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