2020 Fiscal Year Research-status Report
R-Spondinによる肝幹細胞を標的とした造血幹細胞移植後肝傷害の治療開発
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20K21610
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
豊嶋 崇徳 北海道大学, 医学研究院, 教授 (40284096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 直哉 北海道大学, 医学研究院, 教授 (10334418)
冨塚 一磨 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40444640)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | GVHD / 肝幹細胞 / 肝GVHD |
Outline of Annual Research Achievements |
急性移植片対宿主病(graft-versus-host disease: GVHD)は同種造血幹細胞移植後の重大な合併症で、皮膚、腸管、肝臓が3大標的臓器である。われわれは急性GVHDの組織傷害の本質は、組織幹細胞のダメージによる生体のホメオスタシスの破綻にあることを、腸GVHDでは腸幹細胞が、皮膚GVHDでは皮膚幹細胞のダメージを示すことで証明した。しかし、残る一つの標的臓器である肝臓の幹細胞への影響については明らかにされていない。本研究では造血幹細胞移植後のGVHDの発症後の肝幹細胞の動態について検討することを目的とする。本年度は本研究を可能とするマウスモデル(B6ドナー、B6D2F1レシピエントのMHC不適合移植モデル)の確立を実施した。同種造血幹細胞後のGVHD発症群では、造血幹細胞移植後3週目に肝臓の門脈域にT細胞浸潤を認め、胆管上皮細胞のアポトーシスを認め、典型的なGVHDの病理所見を認めた。一方、GVHD非発症の同系造血幹細胞移植後にはこのような変化は認められなかった。次にB6D2F1バックグラウンドのLgr5-eGFPレポーターマウスを交配を重ねて作製することができた。このLgr5-eGFPマウスを同種造血幹細胞移植のレシピエントとして用いることで、移植後のGVHDの発症の有無によるLgr5+肝幹細胞の動態を比較検討した。その結果、造血幹細胞移植後3週目、肝GVHDの発症と同時期にLgr5+肝幹細胞が胆管周囲に出現した。これはGVHDの発症しない同系移植には認められず、GVHD発症に対する反応と考えられた。以上の結果から、GVHDにおける肝幹細胞の動態と意義を研究することが可能なマウスモデルが作製できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行のためには、最適なマウスモデルの作製がキーとなる。本年度に検討したB6ドナーからB6D2F1レシピエントのマウスモデルでは病理学的に典型的なGVHDの病理所見と血清ビリルビン値の上昇が移植後3週目あたりに観察された。今回検討した移植前処置条件では移植後死亡率を低率に抑制することができたため、必要マウス数を低減できる。またB6D2F1バックグラウンドのLgr5-eGFPレポーターマウスの作製に成功した。これによってLgr5+肝幹細胞、前駆細胞の動態解析を可視化できるようになった。以上、研究の基盤整備が初年度で完成したことから、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Lgr5-eGFPレポーターマウスを繁殖させ、移植実験のレシピエントに使用する。同種造血幹細胞移植後のLgr5+肝幹細胞の動態を組織学的に経時的に解析する。肝組織から、in vivoでオーガノイド形成能を検討し、GVHD発症後に経時的にオーガノイド形成能を評価する。これにより肝幹細胞の機能的動態を調べる。またオーガノイド形成能に対する各種GVHD関連炎症性サイトカインの影響を調べる。
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Research Products
(3 results)