2020 Fiscal Year Research-status Report
ALS患者の身体を行為連携社会につなぎとめる仮想現実「体育」空間
Project/Area Number |
20K21885
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
木島 章文 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10389083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郷 健太郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50282009)
小谷 信司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80242618)
島 弘幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40312392)
兼本 大輔 大阪大学, 工学研究科, 講師 (90603332)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 視線 / 協応行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
三者協応のデバイス開発に着手し,視線行為でアバターを操作するシステムの構築に至った.3名の各プレーヤーの視線方向をシステムに入力することで仮想空間上で動作する三体それぞれのアバターを目標地点へと移動させ,さらにそれらにパス動作を行わせた.また移動モードからパスモードへと切り替えることで,移動とほぼ同様の操作手続きでパスの射出ができるようにシステムを設計した.この操作システムを仮想空間上に実装し,ボールを追う1体の仮想プレーヤーをおき,それに対抗するようにプレーヤーにボール回しを行わせた.その後,実験者あるいは予備実験の参加者を対象としてシステムの操作感を入念に試験した. 現在,ホッケー熟練者と一般参加者とを対象として仮想空間上のチームワークを比較する研究に着手している.特に全日本代表経験者を含むホッケー熟練者がその場で連携を組み立てるコミュニケーション能力を有することに注目し,その能力に基づく連携パタンが仮想現実空間上のアバターの連携に反映されうる可能性を検討している.もし,これまでの研究で確認された超短潜時の同期パタンがアバターの動きで再現されたなら,極めて小さな眼球運動を介して運動選手の社会性・身体性を仮想現実空間上で再現できることになる.このことはALS患者を含む肢体不自由者に対して,身体動作を通して他者と繋がるスポーツの場を提供する大きな一歩となるはずである.R3年度ではその可能性を詳細に検討し,システムをALS患者へ適用できる可能性を目指してシステムの簡略化・縮小化を目指したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
システムが予想外に早期に完成したことが進展の最大の理由である.これはシステム設計を分担した郷研究室の働きによるところが大きい.そして次に,思いのほか早期にそれをホッケー熟練者で試験できたことが大きい.これは近隣の山梨学院大学ホッケー部の協力を得られたこと,さらに現地実験室に十分な広さを確保できたことによる.双方の融合を通して,チームスポーツにおける連携プレーの本質的な部分を眼球運動で再現できる手応えを感じている.
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Strategy for Future Research Activity |
現実のホッケーゲームの動作が,仮想空間上にどう転移したかを明らかにしたい.そのポイントは三体のアバターの動きだしの時間遅れと動きの位相差である.これを確認することで,例えばKijima et al. (2017)で確認された超短潜時の動作協応あるいはYokoyama(2018)などで確認された1/3位相ずれなど,実世界における身体動作協応の秩序が視線で動作する仮想空間上のアバターでも再現できる可能性を確認したい.これにより最終目的であるALS患者に実世界の身体協応を経験させる可能性をはかり,彼らに利用できる機材の開発へとつなげたい.
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Causes of Carryover |
COVID-19感染防止の観点から各種学会が中止となり,成果発表にかかる旅費の支出が0になった.R3年度においては海外学会や研究会での成果発表を試み,数回の出張・渡航の可能性を検討している.しかしもしR2年度と同様に渡航が困難となった場合には,R3年度に繰越した金額を,眼電図を用いた眼球運動そのものの解析(分担研究者:兼本大輔(大阪大学)との連携),あるいは体育・スポーツの学会にて,その成果をオンライン公表する費用に充てたいと考えている.
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Research Products
(2 results)