2022 Fiscal Year Research-status Report
教育関係者の地域のことばをめぐる議論の分析―明治末から大正期の岩手県を対象に―
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20K22235
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小島 千裕 北海道大学, 教育学研究院, 専門研究員 (60882066)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | 『岩手学事彙報』 / 言語教授 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度も、『岩手学事彙報』と『岩手教育』の原本の調査を継続して行った。岩手県立図書館所蔵分を中心に、岩手大学図書館所蔵分についても閲覧した(出張期間:4/11~4/19、12/14~12/22)。具体的には、以下のように研究を進めた。 1.本研究の主要資料である『岩手学事彙報』の書誌情報を正確に把握することが必要と考え、上記の2図書館が所蔵する明治40年代から大正12年刊行号につき、編輯方針、構成の変化などをたどった。明治41年2月に『岩手学事彙報』が県教育会の機関誌となって以降も、読者へ積極的な投稿が求められていた。編輯体制についてはあまり記されていないが、終刊に近づくにつれ、編輯委員は岩手県師範学校関係者が多くなっていったようである。 2.本研究の目的である、明治末から大正期の教育関係者による地域のことばをめぐる議論を分析するために、これまで収集してきた『岩手学事彙報』の記事を概観した。そして、とくに地域のことばの実態や矯正に関する見解が詳しく示されたものを取り上げて検討し、国語教育史学会にて発表した。 東北人の発音や話しぶりが不明瞭であることに関しては、教育会の講演などの機会にしばしば言及されていた。学校現場では、児童生徒のことばに発音の混同や方言語彙が多いことから、口形略図を使って発音指導をする、標準語と方言の対照表を教室内外に掲示するといった矯正方法を考え、研究会でその実例を共有していた。ただ、単に方言をなおすというより、子どものことばをよく捉え、表現を豊かにしようと考える教員もいたことが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で補充調査等を計画通りに行うことが難しかった。 これに伴い、論文投稿の予定が遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
適宜調査・検討してきた明治30年代の状況について論文としてまとめる。 その上で、明治末から大正期の議論の分析を確かなものにしたい。書誌情報の把握を進めてきた『岩手学事彙報』につき、地域のことばに関する記述をいま一度もれなく整理する。厳しい矯正方法の検討に終始するのではなく、教員たちが地域のことばに向き合う動機は何か、どのような教育観があるのか注視する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期してきた出張を完了させることができなかったため。 残額については、『岩手学事彙報』の精査のための出張や複写収集の費用として活用予定である。
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Research Products
(1 results)