2020 Fiscal Year Research-status Report
自然言語処理技術を応用した日常的な感情体験に寄与するイベントの抽出手法の検討
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20K22283
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村中 誠司 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (90878349)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 自然言語処理 / トピックモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日常的なイベントや,思考・感情などの内的体験を記述したテキストデータを量的に解析する手法を検討し,コンピュータを活用した新たなアセスメント手法を提案することである。令和2年度は,解析手法のベースを固めるため,場面想定法により体験するイベントを設定の上,調査協力者間で統一した上での記述内容の解析が進行中である。 また,自然言語処理技術の一つである,構造的トピックモデルを用いた解析を遠隔心理支援に関する研究論文のアブストラクトに対して実施し,遠隔心理支援の研究動向を整理した(村中・竹林, 印刷中)。トピックモデルとは,文書集合の中に潜在的に存在する意味のまとまり(=トピック)を推定する技術であり,大量の文書の要約を効率的に行うことができる。多くの研究分野において,関心のある研究テーマに関連するそれまでの論文をまとめ上げるレビュー論文やサーベイ論文が実施される。しかしながら,多数の論文を読み,まとめ上げることは非常に時間的・作業量的なコストがかかる。その点で,トピックモデルを用いたこの試みは,研究動向を短時間で効率的に概観できる点で非常に有効な手法である。村中・竹林(印刷中)では,文書集合内のトピックの出現確率や,出現確率の経年変化を確認し,遠隔心理支援における研究動向として,モバイルアプリを活用したうつや不安への支援に関する検討が優先され,その他支援者へのサポートや予防的介入の必要性が示された。 本研究は申請時に,協力者が記述した内容をクラスタリングすることを想定していたが,トピックモデルもまた「トピック」という単位でテキストをまとめ上げる技術であるため,村中・竹林(印刷中)はテキスト解析手法の選択肢を広げる点で本研究においても意義のある研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画上は,2020年度末の時点で解析結果を確認する予定であった。現在の進捗状況として,1000名を対象としたWeb調査の実施が完了し,データ解析が進行中であり,予定よりも遅れが生じている。理由として,所属機関における教育業務および実習施設運営業務において,新型コロナウイルス感染拡大対策に予定よりも多くのエフォートを割く必要が発生したことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
解析結果の確認を優先して進める。結果を確認次第,論文の執筆と同時に2021年度に予定していた研究2(経験サンプリング法を用いた日常的な活動記録の記述内容の解析)の調査準備を進め,9月までにはデータ収集に着手する。村中・竹林(印刷中)での経験も含め,研究2においてはトピックモデルを活用した文書のベクトル化(=テキストを数値で表現すること)も視野に入れているため,解析計画を変更する可能性がある。この変更も見据えて,汎用的な解析ツールを作成済みであるため,変更に伴う作業コストは抑えられ,短期間で対応可能であると予想される。
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Causes of Carryover |
【生じた理由】 計画に反して支出が著しく少なかったのは旅費である。その理由は新型コロナウイルス感染拡大の事態を受け,旅費が発生する出張がまったくなかったためである。なお,人件費・謝金も支出が0円であるが,その他で支出した調査会社への調査委託費の中に調査参加者への謝金が含まれている。 【次年度の使用計画】 経験サンプリング法は,一人あたり複数回の回答を求めるという性質を持っていることから,調査にかかる経済的コストが通常よりも高い。そのため,当初の研究計画では,調査協力者数あるいは一人あたりの回答数を,解析の正当性を損ねない程度に少なく見積もっていた。次年度使用額はサンプルサイズの拡大に使用し,データの質向上を図りたい。
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Remarks |
「6.研究実績の概要」で挙げた村中・竹林(印刷中)についての情報は以下の通りである。 村中誠司・竹林由武(印刷中). 遠隔心理支援(Telepsychology)におけるこれまでの検討課題:Structural Topic Modelによるアブストラクト解析. 認知行動療法研究.
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Research Products
(7 results)