2020 Fiscal Year Research-status Report
野生ニホンザルにおける社会性の種内変異から探る社会的知性仮説の検証
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20K22284
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
貝ヶ石 優 大阪大学, 人間科学研究科, 特任研究員 (90884031)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 社会的複雑さ / 社会ネットワーク / 毛づくろい |
Outline of Annual Research Achievements |
淡路島に生息する餌付けニホンザル集団において、これまで収集した毛づくろいネットワークに関するデータの詳細な解析を行った。ニホンザルでは主に2個体間で毛づくろいが行われる (2頭毛づくろい) が、頻度は低いものの3個体以上が同時に毛づくろいに参加することもある (多頭毛づくろい)。霊長類における毛づくろいに関する研究は、2頭毛づくろいのみを対象として行われ、多頭毛づくろいに焦点を当てた研究はほとんど行われてこなかった。しかし3頭以上が同時に関わる、多頭毛づくろいのような社会交渉は、認知的により高い負荷を個体に課すと考えられる。これら2種類の毛づくろいがニホンザル社会の中でどのように機能しているかをまず明らかにするため、多重ネットワーク分析による分析を行った。2頭毛づくろいでは、多頭毛づくろいに比べ多様な個体間で毛づくろいが生起しており、他方多頭毛づくろいでは限られた個体間で密な毛づくろいが行われていた。また頻繁に毛づくろいを行う個体の集まりは、2頭毛づくろいと多頭毛づくろいを通じて共通していた。これらのことから、2頭毛づくろいは様々な相手と行うカジュアルなコミュニケーションとして、多頭毛づくろいは個体間の親密さを特に強めるコミュニケーションとして機能していると考えられた。以上の研究結果は、2021年度中に国際学術誌に投稿予定である。また、2021年度には、ニホンザルを対象とした認知実験を行い、2020年度に分析した多重ネットワーク構造との関連を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍によりフィールドワークを行うことが困難であったため、計画していた観察および認知実験を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
淡路島ニホンザル集団でこれまで収集した尿サンプルからホルモン分析を行い、それをもとに個体のオキシトシン動態と社会ネットワークサイズとの関連を明らかにする。特に、2020年度に解析を行った多重ネットワーク分析の結果との関連を検証することで、「社会的複雑さ」に関わる内分泌的基盤についてより詳細な分析が可能になる。 フィールドワークについては、今年度も実施が難しい状況が続くと予想される。様々な状況を考慮しつつ、これまでにデータの蓄積がある淡路島でのフィールドワークを優先的に行い、認知実験のデータ収集を目指す。状況が許せば他のフィールドでもデータ収集を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により計画していたフィールドワークやデータ解析が実施できず、旅費や人件費等を使用することができなかったために次年度使用額が生じた。2021年度にはフィールドワークの実施および、ホルモン解析を外注するため、主に旅費や人件費に次年度使用額を支出する。物品費や論文投稿費には主に20201年度分助成金から支出することを計画している。
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Research Products
(1 results)