2020 Fiscal Year Research-status Report
温度可変放射光X線回折による熱電発電Siデバイスの局所領域熱特性評価に関する研究
Project/Area Number |
20K22418
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
横川 凌 明治大学, 理工学部, 助教 (10880619)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 熱電発電デバイス / Si / 放射光 / X線回折 / CTR散乱 / 熱酸化膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコン(Si)は微細加工することで低熱伝導率を発現し、また簡便なプロセス、安全性も確立されており、電子デバイスと親和性が高いことから、新たな熱電発電材料として有望視されている。今後、Siの飛躍的な熱伝導率低減へ向けて、熱の伝導を担うフォノンの散乱機構を積極的に導入することが提案されているが、熱輸送を考える上で局所的な熱特性評価技術が未発達な状態であり理論的予測に留まっている。 上記背景を鑑み、本研究はSi極微小領域の熱特性評価技術を確立すべく、初年度は熱伝導率低減に寄与する構造の一つであるSi酸化(SiO2)膜/Si界面に対し、結晶構造に敏感な放射光X線回折(XRD)に着目し、Si界面の熱特性を評価可能であるかを検討した。具体的には放射光XRDで得られるSiO2/Si界面の構造を反映したCrystal Truncation Rod (CTR)散乱を含んだX線散乱プロファイルを取得し、温度依存性を評価することでSiO2/Si界面とSi基板の熱特性を明確に分離し、SiO2/Si界面近傍における熱輸送を詳細に把握することを目的とした。 熱酸化のみ行ったSi基板、および熱酸化後にアルゴン(Ar)イオン注入を行い界面近傍に欠陥を生成したSi基板の2水準を準備し、放射光XRD測定を行った結果、面外方向における([001]方向)CTRのX線散乱強度分布に差があることを確認した。温度可変放射光XRDで得られたプロファイルに原子の熱振動を反映するデバイワーラー因子を加えてシミュレーションと比較検討することで、Si界面に関する詳細な熱特性を得られると考えており、次年度は他手法で作製されたSiO2膜/Si構造で検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は放射光XRDによるSi極微小領域の熱特性評価確立すべく、大型放射光施設SPring-8で測定を異なるSiO2/Si界面のCTRプロファイル測定を行った。結果、面外方向([001]方向)におけるCTRの散乱強度分布がに差が生じていることを確認することができ、他のSi界面でも本手法は適用できる可能性があり、概ね計画通りに進んでいると考えている。得られたCTRプロファイルに対し、熱特性を踏まえた理論的モデルとの十分な照らし合わせができていないため、次年度で検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
熱酸化と異なる酸化膜を被覆したSi基板、および歪印加や異なる面方位を有するSi基板を準備し放射光XRD測定を実施する。また初年度で得た結果とも照らし合わせ、X線散乱強度分布強度による微視的な熱伝導メカニズム解明へ向け、定量的に熱特性を検証し、熱電発電Siデバイスプロセスにフィードバックを行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で、今年度学会・試料作製を目的とした出張、およびSi基板などの消耗品費として使用できなかったため次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画として、歪Si基板を始めとした実験消耗品の購入、および大型放射光施設SPring-8の出張費に充当する予定である。
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