2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22453
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
菅原 彬子 近畿大学, 建築学部, 助教 (90878175)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ダイヤモンド構造 / 有限要素法解析 / 吸音材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,所望の吸音特性をもつ音響メタマテリアルを3Dプリンターを用いて作成し,健康・衛生面の問題,耐久性,耐水性,強度といった従来一般的に用いられた多孔質吸音材の課題を解決した,次世代吸音材として提案することを目的とする.研究は(1)理論・数値解析による音響メタマテリアルの設計,(2)3Dプリンタを用いた音響メタマテリアルの作成と性能検証,(3)特性のデータベース化と最適設計手法の確立,という3つの目標に従い進める.令和2年度は,物質の結晶構造を模した"硬くて衛生的で耐水性に優れた"多孔質吸音材の開発を目的として研究を進めた.(1)数値解析によるパラメトリックスタディを行い,(2)の途中段階までが進捗である.ある周期構造に対し,ミクロなユニットセル内での音の浸透性や流れの特性からマクロな音響特性である等価密度や等価体積弾性率を導き,そこから吸音率を算出するというZielinskiら(J Sound and Vibration, 2020)の数値解析手法を有限要素法解析ソフトに実装し,ダイヤモンド構造や単純立方格子といった基本的な結晶構造を対象に数値解析を行った.ユニットセルのサイズや空隙率等が吸音特性に及ぼす影響を加味し,実用的な範囲のサイズで優れた吸音特性をもつ構造を検討した.また,静適応力解析により,従来の多孔質吸音材に比べ本構造の強度が向上していることを確認した.加えて,これらの検討結果を基に,3Dプリンタを用いて実際に周期構造を作成した.セラミック入り樹脂材料を用いて作成した本構造は,"硬くて衛生的で耐水性に優れ"ており,従来の多孔質吸音材がもつ課題をクリアした構造となりうる.現在,作成した構造の吸音効果を実験的に検討する(実施目標(2))ための機材として,音響管を制作している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,(1)理論・数値解析による音響メタマテリアルの設計,(2)3Dプリンタを用いた音響メタマテリアルの作成と性能検証,(3)特性のデータベース化と最適設計手法の確立,という3つの指針で行う.このうち令和2年度は(1)と(2)の途中まで行ったため,おおむね順調に進展している.現在,コロナ禍の影響で音響管の制作にやや時間がかかっているが,代わりに(3)に着手し,理論検討と数値解析を用いた音響数値解析・構造解析をさらに進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
数値解析結果を基に作成した構造の音響特性を実験的に検討し,その吸音効果を確認する必要がある.そのため,現在音響管の制作を進めている.ペアマイクロホンをはじめとする実験用機材は既にある程度購入しており,音響管の完成次第,実験を始められる状態である. ここまでの内容を,9月の学会で研究発表する予定である. また,多孔質型の吸音材だけでなく複数の共鳴器を組み合わせた吸音機構に関する理論検討も進行中である. 夏までにある程度実験を進めたのち,再度数値解析と併用してデータベース化や対象とする周波数帯域や状況に応じた最適な設計方法を確立する予定である.ここまでの内容を査読論文として発表する予定である.
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Causes of Carryover |
ペアマイクロホンの購入に時間を要し,本年度科研費使用の期日に間に合わなかったため,次年度使用額が生じているが,4月時点で購入済み.
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