2020 Fiscal Year Research-status Report
心不全リスク定量評価に向けた補助人工心臓圧流量推定に基づく動脈硬化検査法の開発
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20K22508
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Research Institution | Morinomiya University of Medical Sciences |
Principal Investigator |
信太 宗也 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 助教 (20880347)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 時間応答性 / ふれ回り運動解析 / 標準化 / 数値流体解析 / 血液ポンプ / 大動脈コンプライアンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,補助人工心臓用の血液ポンプ駆動情報から,大動脈に関する生体情報(血管コンプライアンス:AC,大動脈流量および大動脈圧)を簡便に評価できる手法(以下,本検査手法)を開発する.本年度は以下の研究項目(1)および(2)を実施した. 【研究項目(1)】心拍に伴って大動脈の血流量や血圧は時間的に変化するため,本検査手法の時間応答性(どの程度の時間間隔で生体情報が評価できるか)は,臨床応用に向けての重要な検討事項である.本研究では,上記の時間応答性を定量的に調べた.具体的には,本検査手法における評価指標のポンプ内羽根車(インペラ)のふれ回り運動に関して,実験計測や数値流体解析(CFD)の手法に基づいた解析を実施した.解析の結果,本検査手法の精度と時間応答性はトレードオフの関係にあるものの,実用的な精度と時間応答性を両立し得ることが明らかとなった.本成果は,本検査手法が臨床においても有用であることを示すものであるため,本検査手法の臨床応用に繋がる臨床前研究として重要な意義があると言える. 【研究項目(2)】本検査手法の原理である[ポンプ駆動情報]-[ポンプ特性]-[AC]の相関には,インペラが血流から受ける力(流体力)が影響する可能性がある.インペラに働く流体力はポンプの流路形状によって決まるため,本検査手法を従来の血液ポンプに適用する(手法標準化)にあたって,ポンプ流路形状と本検査手法の関係を調べることは重要となる.本年度は,本検査手法の精度向上や手法標準化の観点から,ポンプ流路形状とインペラに働く流体力の関係をCFDによって調べた.その結果,ポンプ流路形状として特に渦巻室形状と径間隙が,本検査手法の精度に対して大きく影響を及ぼすことが明らかとなった.本研究により本検査手法の標準化ができれば,既存の補助人工心臓を利用することで本検査手法の迅速な臨床応用が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度実施予定の実験計測系構築準備に遅れが生じているものの,「研究実績の概要」の項で述べた2020年度の研究成果は,交付申請書に記載した「2020年度研究実施計画」におおむね沿って挙げられている.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度前期においては,「研究実績の概要」の項に記載した【研究項目(2)】におけるCFD解析結果を評価するための実験計測を実施する計画である.具体的には,試作ポンプを製作し,本検査手法の精度や時間応答性に対する渦巻室と径間隙の流路設計の影響を確認する. 2021年度後期においては,ポンプ駆動情報からACを評価するのに適切なアルゴリズムを,特に動特性に着目して検討する.具体的には,AC評価の時間分解能や時間遅れを0.1秒以下とすることを目標とし,データの適切なフィルタリングおよび補間手法を検討する.次に,検討したアルゴリズムをポンプシステムに実装し,本検査手法を実現する.
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Causes of Carryover |
本研究の実施方法は,大きく実験計測と数値流体解析(CFD)に分けられる.当該年度の研究実施計画はCFDによる研究が主であったが,並行して計測に用いる実験系の構築を行う計画であった.CFDによる研究は「研究実績の概要」で記載した通り順調に進展したものの,実験系の構築に関しては新型感染症の影響により遅れが生じている.これは適切な実験系構築に向けた予備実験が,十分に実施できていないためである.また,予定していた2件の学会発表に関しても,新型感染症の影響により1件が中止となったため,1件の発表にとどまった.以上の状況から,特に物品費と旅費に関して次年度使用額が多く生じた. 次年度の使用計画としては,2021年度分請求額と併せて前期の内に実験系の構築(試作ポンプや模擬循環回路の製作)を行う.また,2021年度は国際学会の参加のための旅費を計上していたが,新型ウイルスの影響により国際学会は中止またはオンライン開催となる可能性がある.この場合は旅費として計上した予算を物品費(実験計測系の拡充費やCFD解析環境の整備費)に充て,研究成果の質や量の充実を図る予定である.
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