2020 Fiscal Year Research-status Report
心筋再生治療のための心筋細胞脱分化におけるマイトファジーの意義の解明
Project/Area Number |
20K22707
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 翔大 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (80880294)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 心筋再生 / マイトファジー / 脱分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋細胞は細胞増殖をほとんど行わないことがよく知られており、心疾患に伴う心筋細胞死は不可逆的かつ重篤な心不全へとつながる。したがって、心筋細胞の増殖メカニズムを明らかにすることで、心筋再生を促進させる心不全の根本的治療法の開発が求められる。そこで申請者は心筋増殖に関わる転写共役因子YAP、ならびにミトコンドリア選択的なオートファジーであるマイトファジーに焦点を当てて心筋増殖メカニズムの解明を目指している。 令和2年度において、申請者は新生児ラット培養心筋細胞に、レンチウイルスベクターを用いてマイトファジー促進因子PINK1を過剰発現させると、ルシフェラーゼを過剰発現させたコントロール群と比較して細胞周期マーカーであるKi67、AuroraB、ならびにpHH3を発現する心筋細胞の割合が増加することを明らかにした。さらにYAPの発現抑制によるKi67陽性心筋細胞割合の減少がPINK1の過剰発現により改善することを見出した。またPINK1の発現抑制を行った培養心筋細胞では生存率が低下した。これらの結果はマイトファジーの促進が心筋細胞の生存ならびに増殖に関わることを示唆しており、かつYAPによる心筋細胞増殖メカニズムの一部である可能性を示すものである。 さらに申請者は今後の検討につながるものとして、PINK1過剰発現心筋細胞についてのRNAシークエンスを行うことで、細胞増殖に関わる複数の候補遺伝子を見出している。またPINK1を過剰発現させるアデノ随伴ウイルスベクターを作製し、マウスの心臓に目的遺伝子を過剰発現させることができることを確認している。 今後は、新生児ラット心筋細胞だけではなく成体マウス心筋細胞を用いた解析を進めるとともに、心筋特異的YAP欠損マウスを用いたin vivo解析も行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はマイトファジー促進因子であるPINK1を過剰発現させることで細胞増殖マーカーを発現する新生児ラット培養心筋細胞の割合が増加することを明らかにした。さらにPINK1を過剰発現させた心筋細胞についてRNAシークエンス解析を行うことで、すでに心筋細胞の増殖に関わることが報告されているものを含む複数の遺伝子の変動が認められた。これらの結果は、本検討を進める上で極めて重要な結果であると言える。また、以降の検討を進める上で重要なアデノ随伴ウイルスベクターの作製、ならびにその条件検討、および心筋特異的YAP KOマウスの作製も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
PINK1の過剰発現による細胞増殖メカニズムを明らかにすべく、YAP、ならびにRNAシークエンス解析の結果から得られた候補遺伝子の関与をさらに詳細に解析していく。またそのメカニズムの一端にマイトファジーが関与しているのかについての検討を行う。成体マウス培養心筋細胞を用いてPINK1の過剰発現が脱分化を誘導するのかについて調べる。さらにin vivo解析として、心筋特異的YAP KOマウスに対して心筋梗塞負荷を行い、梗塞border領域における心筋細胞増殖が、アデノ随伴ウイルスベクターによるPINK1過剰発現により促進されるのかを解析する。
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Causes of Carryover |
RNAシークエンス解析が年度跨ぎになってしまったため請求が令和3年度分になった。
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