2020 Fiscal Year Research-status Report
内在性ウイルスエンベロープを介したエクソソーム輸送機構に基づく胎盤への薬物送達
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20K22708
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
稲垣 舞 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (90878274)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 胎盤 / 栄養膜細胞 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
エクソソーム(細胞外小胞)は、標的指向性を有し、核酸やタンパク質などの高分子を内包する特徴を持つことから、標的組織へ高分子薬物を送達させるためのキャリアーとして注目されている。そこで本研究は、胎盤から分泌されるエクソソームの胎盤への再取り込み機能に着目し、ヒト胎盤栄養膜細胞における胎盤由来エクソソームの輸送特性を明らかにすることを目的とした。ヒト胎盤栄養膜モデル細胞の培養上清から、超遠心分離法を用いて単離したエクソソーム画分の平均粒子径は約140 nmであった。単離したエクソソームをPKH67で蛍光標識し、ヒト胎盤栄養膜モデル細胞自身への取り込み活性及び温度依存性を解析した。エクソソームの細胞内取り込みは、37℃と比較して、4℃において有意に低下することが示され、胎盤栄養膜細胞内へのエネルギー依存的なエクソソーム取り込み機構が関与することが示唆された。さらに、胎盤栄養膜モデル細胞へのエクソソーム取り込みは、シアル酸及びヘパリン共存下で、それぞれ有意に阻害された。これらの結果から、ヒト胎盤栄養膜由来エクソソームの、栄養膜細胞への輸送機構には、少なくとも一部に細胞膜表面に発現するシアル酸結合糖鎖やヘパラン硫酸プロテオグリカンが関与することが示された。さらに、阻害剤共存下における取り込み解析から、ヒト胎盤栄養膜由来エクソソームの栄養膜細胞への取り込みには、一部クラスリン介在性エンドサイトーシス機構が関与することが示唆された。以上の結果から、胎盤栄養膜細胞由来のエクソソームが胎盤栄養膜細胞に取り込まれる特性を利用して、胎盤栄養膜細胞への高分子薬送達を実現できる可能性が提示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り、ヒト胎盤栄養膜細胞からエクソソームを単離し、その特性を明らかにした。さらに、ヒト胎盤栄養膜細胞を用いた胎盤由来エクソソームの取り込み活性の解析、及び阻害剤を用いた取り込み機構の絞り込みを行い、エクソソームの輸送特性を解析した。以上から、ヒト胎盤栄養膜由来エクソソームの胎盤への再取り込み機構を理解する上で基盤的な成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
生物工学の専門家からの助言を仰ぐことによって、ヒト胎盤栄養膜細胞由来エクソソーム単離の高収率化を目指す。さらに、プロテオミクスを用いて、ヒト胎盤栄養膜細胞及びエクソソーム上に発現するタンパクを網羅的に同定し、パスウエイ解析や文献情報を基に、ヒト胎盤栄養膜細胞におけるエクソソーム受容体とエクソソーム上のリガンドの絞り込みを効率的に行う。
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Research Products
(1 results)